マミヤの忘備録

ラップ、映像、その他諸々について記したいなぁと思ってます。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第10話「されど舞台はつづく The Show Must Go On」

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あらすじ

 オーディション最終日を知らせる着信。舞台少女はそれぞれ思い思いに過ごし。華恋とひかりは以前入れなかった東京タワー水族館へ行く。ひかりは幼い頃に交わした約束への感謝を述べ、レヴューへと赴く。

 舞台には華恋、ひかり、真矢、クロディーヌの4人。その他の舞台少女は客席から見守る。参加人数でイレギュラーが発生したため今回は2対2のレヴューに。ひかりと真矢はそれぞれ華恋とクロディーヌを指名する。

 トップスタァをかけたデュエットの行方はいかに―――。

 

 

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感想

 ついに訪れたオーディション最終日。Aパートはそれぞれの過ごし方が短いながらも丁寧に描写された。ななが純那に感化され名言を引用し変化を肯定したりと、前回からの物語のバトンもしっかり繋がっている。

 今回は華恋とひかり、そして真矢とクロディーヌの物語。前者は4話のように都内を観光する。そのきっかけになったのが、「水族館にまた行こう」という約束を華恋が思い出したから、というのも良い演出。どんなに離れたとしても、忘れかけたとしても、絶対に思い出し、巡り会う。二人の関係性を率直に表した描き方だ。お互いの髪留めを止めるシーンも印象的で、幼い頃に抱いた夢だけは変わらずに成長したことが表されていて好みだった。とはいえ不穏なところも散りばめつつ、最後に二人はあの結果となるが、それは次回への引きでもあるので、次に真矢とクロディーヌについて見ていく。

 お互いが強く惹かれ合っている、というのを華恋とひかりでは記憶という形で表現されたが真矢とクロディーヌも同様だ。クロディーヌにとっての屈辱の過去であり、舞台少女として新たに生まれるきっかけになった入学試験の日のことを、真矢はしっかりと覚えている。華恋とひかりのような約束はそこにはないが、それを記憶しているというだけで華恋たちとは違う運命がそこに表されている。

 子役としてスターダムを駆け上がるクロディーヌにとって初めての敗北が真矢という存在。そして孤高の天才である真矢にとっても対等な立場で食い下がってくる相手はクロディーヌが初めてだったのではないかと思う。だからこそずっと憶えていた。「負けてない」と敵対心を露わにされてもなお、真矢は憶えていた。忘れられるはずがないのだ。お互いにとって初めて覚える感情、そしてその対象は絶対の相手になり、レヴューデュエットまでお互いを導く。

 レヴュータイトルは“運命”。曲は『Star Divine』。『ラブライブ!』シリーズなどでも過去の楽曲を大一番に使うという手法は成されたが、本作はさらにレヴューという性質上、レヴューの出演者のみによる歌唱となっている。

 激しい剣戟の末、勝利を掴んだのは華恋とひかり。レヴュー終了後、クロディーヌは「負けたのはわたし、私だけよ…天堂真矢は負けてない」と涙まじりに訴える。クロディーヌの気持ちを想うと胸が痛くなるセリフだ。トップの成績である真矢が負けるはずがなく、もし負けたとするならそれは自分のせい―――自分の“負け”を認めてまでも真矢の孤高を守ろうとするクロディーヌのこのセリフは響くものがある。さらにその後、フランス語で嗚咽を漏らすクロディーヌにやさしくフランス語で語りかける真矢。クロディーヌの反応的に初めてフランス語を喋ったのだろう。他の舞台少女と言語的な断絶を加えることで、二人以外は理解できない会話になっていて、トップの者たちしか持ち得ない孤高が描かれていたように思う。

 そして真矢があくまで負けたのではなく、あの二人の方がスタァライトにふさわしかった、と言うのも面白い。どちらも最高のデュエットを放ち、その末に舞台が選んだのは華恋とひかり。舞台は生ものだ、という話もあるが、まさにその所以を見るような物語だった。人は変化し、関係も変化していく、華恋みたく言えば日々進化中なのだ。真矢とクロディーヌにとって結果は不本意だったが、それ以上にかけがえのない相手に気づけたことは財産だろう。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第9話「星祭りの夜に」

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あらすじ

 第100回聖翔祭に向けて制作が続く。脚本が上がり、キャストはそれぞれの衣装のアレンジを提案したりと、舞台をよりよくしようとそれぞれの想いが募っていく。そんな中、今までの再演どおりに行かないことにななは憤りを隠せない。ななの異変に気づく舞台少女たちだが、原因がわからず何も出来ない。

 道具置き場に佇むななを心配してやってくる純那。ななが選んだ“運命の舞台”を知る。

 きらめいた時を繰り返そうとするななと、未来に向かうことでさらにきらめきを目指そうとする華恋。二人のレヴューが始まる―――。

 

 

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感想

 スタァライトはどの話数も物語が上手いなと思うのだけど、この話数は今までの積み重ねを上手く昇華してるのもあってトップクラスに脚本の巧みさが光っている回だった。

 物語の冒頭から、いつもの母性に溢れ飄々とした佇まいのななはそこになく、今回は今までに“見たことない”なながそこにいた。

 レヴューのタイトルは“絆”。そして相手は華恋。未来を目指す者と過去を想う者、今まで十分に対比されてきた二人だが、今回で改めて両者のスタァライトへの想いが描かれる。華恋は、英文の“スタァライト”の戯曲本をひかりに訳してもらいながら戯曲スタァライトという作品自体への愛を新たにし、ななは別れが最後に待つ悲劇に対して嫌悪感を表す。しかもどちらも自分自身の経験や性格を投影していて、その果てに華恋は惹かれ、ななは反発しているというのが面白い。

 “絆”というテーマでレヴューが行われるが、これも面白いテーマ設定で、絆という言葉には人と人の結び付きという意味もあるが、転じて人を束縛するものという意味を持つ。ネガにもポジにも捉えられる言葉のチョイスと、華恋とななに対してこの言葉を持ってくるのはすごいなと。

 今回の物語はレヴュー以上に、ななと純那が夜の校舎で話し合うエピローグが印象的だった。

 純那はななが再演してきた“運命の舞台”を咎めたり、否定するのではなく、受け止め、そしてその上でななのことを労う。そこからななに促され、過去の偉人たちの言葉を引用していくところは示唆的だ。偉人たちは過去になったからとて、ただ終わっていくのではなくその思想は今も燦然ときらめき続ける。その言葉は現代の少女の糧となり、今なお新たに言葉が紡がれている。“負けてしまったら終わり”―――華恋とのレヴュー中にそれぐらい思い詰めていた純那がななを救うポジションになることで、この話数が純那のアフターストーリーになっているのも巧みだなと。そしてなな自身も、繰り返しの再演の中で“違うもの”を模索していたことを指摘される。

 最後に純那はボロボロの舞台ノートを指して語りかける。

「あなたが大切にしてきた時間。守ろうとしてくれたもの。全部持っていってあげて。次の舞台に。」

 ななの想い、繰り返してきた時間。全てを許し、救う言葉になっていると思う。作劇的にも上手いのは、なながかなり大仕掛けなことをしてきたけど、悪者にならないように着地させているのがすばらしい。

 最後のやりとりはななのやってきたことに想いを馳せると涙腺が緩みまくるシーンだ。ななは時間を繰り返す度に孤独が増して、その度にきらめきに届かないことを知り、でもループを終わらせることができない。そしていつしか友に敗れ、運命の舞台も断たれ、繰り返した再演は誰にも知られることなく静かに終わる。それでも今までなながやってきたことを純那は肯定し、再び始めるための原動力とすることで物語が結ばれる。ななの果てしないほどの孤独、そしてそこから救われたことを想うと涙が流れる。

 余談だけども、純那が引用した偉人の中にニーチェがいたが、彼は“永劫回帰”という思想を説いた人物だ。永劫回帰をざっくり説明すると「人の生は繰り返し流転するもので、何度も同じ時間、同じ場所で同一の経験をする」という思想。それを肯定できるかというのが議論の骨子となる。もっと砕けた言い方をすると、「起こることは全て決まっていて、新たに生を受けたとしてもそれは変わらない。それでも自らの生を肯定できるか」と言い換えられる。まるで舞台のようだ。終わらない輪舞を演じたななに対して、純那がこの永劫回帰の思想を持ったニーチェを引用し、「過去・現在・未来」のことを絡めながら、先へ進むことを肯定する言葉を伝えたのが個人的にはとても印象的だった。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第8話「ひかり、さす方へ」

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あらすじ

 ひかりがイギリスの王立演劇学院にいた頃。今以上に情熱を持って舞台に取り組んでいた。それも全てはキリンのオーディションを経て一変する。惜しくも2位となったひかりは自分のきらめきが奪われたことを悟る。失ったきらめきについてキリンを問い詰めるひかり。トップスタァの誕生のためには多くのきらめきが必要という。ひかりに少しだけ残ったきらめきを見て、キリンは日本でのオーディションへの参加を提案。華恋との約束を果たすためにひかりは日本でのオーディションに臨むことに―――。

 

 

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感想

 ひかりのオリジンと再生産が描かれた話数だった。見所は今回の主役であるひかりを演じる三森すずこさんの演技。イギリスにいた頃のひかりやきらめきを失ったひかり、また幼少期のひかりと様々な声色を駆使したキャラクターの変化を楽しめた。また作画も、ひかりもそんな表情をするのか、という驚きがあった。ゆえにきらめきが奪われる展開が待っていると思うと切ない気持ちになる。

 印象的だったのはひかりがモノローグで自身が舞台少女となった瞬間を語る場面だ。ひかりが華恋と一緒に舞台を観た理由が“他の子が知らない世界を知っている”という自慢のつもりだったというのが素朴かつ共感できるものだった。そこから華恋から予期せぬ返答があり、共にスタァになる約束を交わしたことで舞台少女として生まれ変わったというのが面白い。このときのひかりは鑑賞者としての自分を華恋に知ってもらおうと考えたが、華恋はひかりの思惑とはべつに、舞台を観る側ではなく立つ側になろうと子どもなりに見据える。ひかりがトップスタァを目指すそもそものきっかけは華恋がかけてくれた言葉―――のちに王立演劇学院に通う才女が、ただ一人の女の子が交わしてきた約束で自らの夢を定めるという展開に胸が熱くなった。おそらく、このときのひかりは自分がプレイヤーになるという意識はなかったように思う。そこから舞台に感銘を受けた者のおかげで夢を自覚するというのは、他者との関係性で物語を紡いできた本作らしい落とし込み方だ。

 今回は孤独のレヴュー。自分自身だけにしかわからない苦悩を抱えるひかりとななが剣を交える。どちらもキャラ性が“オーディション”と強く結びついてる二人。再オーディションやループの設定が物語の根幹と関わりがあるという風に描くのではなく、ひかりとななの個性やバックボーンの強化に使われているのが面白い。世界観や設定以上にキャラを注力して描いているのが改めてわかった。勝者はきらめきを再生産したひかり。雄々しく独り“ポジションゼロ”を宣言するが、最後にはステージ上にもう一人の姿はあるのか。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第7話「大場なな」

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あらすじ

 2018年3月3日―――第99回聖翔祭。99期生による「スタァライト」開演。成功のうちに幕を閉じる。

 2018年3月5日―――舞台の打ち上げ。永遠の仲間と運命の舞台を見つけ、舞台少女"大場なな"が誕生。

 2018年5月25日―――ななはオーディションでトップスタァに。自らが望む運命の舞台を叶える。

 2017年4月17日―――再び第99回聖翔祭「スタァライト」を開演するために終わらない一年が始まる。

 

 

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感想

 話数としても折り返し地点、ここでようやくいろいろなものを匂わせていたななのメイン回。謎がいくつか明らかになったが、やはり一番の衝撃はななが何度もトップスタァになり、その度に一年前に戻っていたという事実。99期生のみんなを守るための彼女なりのやり方ではあるようだが、彼女の誰かが欠けていくことや離れていくことへの恐れはどこから来るのか。それを考えると、家族がいないもしくは自らの家庭環境を嫌悪しているかのどちらかなのではと思う。ループを繰り返したななの眼差しは99期生を包み込むようで、その優しさを表すかのようにメインキャラ以外の同級生のデザインが並ぶカットは圧巻だった。

 繋がりを手放さない、そういう意味ではななもまた他者ときらめこうとしていることがわかるが、望みのスケールが他の舞台少女と違うのと、99期生全員を巻き込むという点ではその強さも桁違いだ。しかし何度もトップスタァになり、望みの舞台を何度も再演するが、初めての「スタァライト」のときのきらめきには届いていないというのも切ない。本当はもう届かないということに気づいているのかもしれない。それでも時間を前に進ませたくない、みんなを離したくない、そんなジレンマを感じる。まだ気づいてないとしても、日々進化する華恋、それに感化された舞台少女によっていずれはななの時が動き始めるのかもしれない。

 ループの最中、突如現れたひかりやそれによってオーディションに参加することになった華恋、その他にもイレギュラーな要素が多く"台本"がおかしくなっていることを良く思っていないななだが、転入生であるひかりに積極的に絡みにいったりと、この状況すら楽しもうとするのは舞台少女としての潜在的な素質の高さを感じさせる。しかしこれはなな自身が変化を求めているとも言えるのではと思う。ひかりとの絡みは自らの舞台に引き込むのが目的ではあるけど、そのためには筋書きをリライトしなければならない。ずっと同じ日々を送るはずが一人増えると前とは別物になる。思えば、ループの最中に華恋が発するはずだった言葉をななが先回りして話す展開があるが、あの"アドリブ"もななの変化を求め、きらめきへと向かおうとする気持ちの発露なのだと思う。こう考えるとななのやりたいことと求める舞台は矛盾した中で成り立っているのがわかる。この終わらない輪を断ち切るのは一体誰なのだろうか。

 余談だが、一番上の画像のカットが今回だと好きなのだが、おもしろいのがループの最中で「スタァライト」の制作途中にもかかわらず、終演後の99期生8人の写真が立ててあることだ。時を戻す際に物を持っていけるのか、単純にループしていることをななの机を映して表しているのか、いずれにせよこれだけでいろいろと想像が膨らむ良いカットだなと。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第6話「ふたりの花道」

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あらすじ

 レッスンの最中、双葉の成長を目の前で見て焦りを覚える香子。その後、聖翔祭に向けた歌劇「スタァライト」のオーディションでメインキャストから外され、さらに焦りが募る。その夜、双葉がクロディーヌに師事して秘密特訓をしていたことを知る。裏切られたと思い怒りに燃える香子を見て、双葉はクロディーヌの部屋に移ることに。

 キリンのオーディションでトップを取ればと息巻くが思惑は外れ、負け続きの日々。香子は双葉の気を引こうと学校を退学し家元に戻る素振りを見せるが、双葉は止める気配を見せない。新幹線のホームで泣きべそをかく香子を追って双葉がやってくる。言い合いの最中に鳴る着信音―――追ってきた双葉、追われてきた香子、二人のレヴューの幕が開く。

 

 

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感想

 今回は双葉と香子の物語だが、前回を補完するようにまひるとひかりのやり取りがあるのが良い。片付けができないひかりを叱咤するまひる、元々世話焼きな気質であることがわかる。華恋に対する想いでこじれてしまったが、わだかまりがなくなれば元々の気質が好転するという展開は、根本的な性格は変わらないが良い方向に向かうことはできるという地に足着いた答えで、さらにキャラ性を殺さずに成長が描けていて、短時間の描写ながらも見事だった。

 そして今回は双葉と香子の幼少期から現在までが描かれるのだが、この二人の話を話数の中盤に持ってくるのがまず上手いなと。二人の話が主ではあるが、今までの物語を見てるとより楽しめる作りになっている。追い追われるという関係性は真矢とクロディーヌを、二人の約束という部分では華恋とひかりを、依存的なところは前の華恋とまひるを思わせる。二人の関係が他のキャラ同士のデジャヴで終わるわけではない。追われる側の香子の自覚のなさと、それをわからせるために追い抜こうとする双葉という図式が二人ならではの関係になる。

 あくまで双葉が支え続け憧れたのは、舞台で咲き乱れる花のように舞う香子だ。その位置まで肩を並べるために双葉は鍛錬を欠かさなかったが、いつしか香子は腑抜けてしまった。その姿勢を叩き直すためのレヴューは、追う側が追われる側を目覚めさせるという今までのレヴューとは一味違う図式になった。

 3話で、双葉は自分も「あたしにだってなれるかもしれないんだ」とトップスタァを目指す旨をクロディーヌに話していたが、双葉にとってはスタァになることで香子の相手にふさわしい存在になれることを含んだ発言だったのかもしれないと6話を観て思う。今回は一番近いファンが一番の共演者という関係だった。物語が紐解かれていくとそれぞれが自分のためだけではなく、誰かのために、どんな理由でスタァを目指すのかがわかってくる。同じような構図でも、それぞれのキャラの関わり方で全く違う物語に昇華されていて、9人という大所帯を巧みにまとめ上げていると改めて思う。

 そして次回は満を持して、今のところ深く描かれていないなながメインの回。サブタイトルがキャラ名というインパクトもさることながら、Cパートでの「今回の再演」という表現も気になるところだ。本作は二層展開式を強く押し出しているが、舞台とはまた違う展開になっていくのだろうか(ちなみに舞台版は未見)。

 初登場時の「全部わかってるわ、私はね」というセリフに得体の知れなさを感じたが、その一端が次回でようやくわかりそうだ。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第5話「キラめきのありか」

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あらすじ

 昨年度の歌劇「スタァライト」の夢を見ながら、目覚まし時計の音で目が覚めるまひる。横にいるはずの華恋とひかりの姿がない。

 華恋とひかり、二人だけで夜を過ごして以来、華恋は見違えるように変わった。しかしそのことにまひるはわだかまりを募らせる。

 故郷のおばあちゃんからジャガイモと一緒にまひるが中学生のときに受けたインタビュー映像が送られてくる。途中で映像を切り、目標なんて何もないと痛感するまひる

 華恋とひかり、二人の間に入ることができないもどかしさは続く。そんな中、オーディションの着信が鳴る。去年、華恋が見せてくれたきらめき―――「ずっと一緒にいる」―――この約束を取り戻すためのレヴュー。まひるの想いが舞台上で炸裂する。

 

 

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感想

 演出としてはコミカルなものが多く、笑える仕掛けもたくさんあったがどこか切なさを感じた。というのも実質的にはまひるの失恋回だからだろう。しかしただ悲壮感だけがあるのではなく、コメディとしての面もあるのはまひるというキャラのおかげであるように思う。この第5話は最初から最後まで演出が効いてて、4話でデュエット版が披露されたあとに5話のEDがまひるのソロというのも、切なさがありつつも自立を思わせる。

 自らがトップスタァになるためにオーディションに臨む舞台少女が多い中、華恋はひかりと共にその頂きを目指すが、まひるもそれに近しいものがある。まひるは華恋と共に運命の二人に、と願いながらそれを口に出せずにいて、今回の嫉妬のレヴューでその想いが爆発することになるが、華恋とまひるの二人の「他者と共にトップに」という在り方とは決定的に違うものが見えた。それは華恋とひかりが同じ願いのもとにトップスタァを目指すのとは違い、まひるは前の華恋のままでいて欲しいという想いが先行している。華恋とひかりのような、同じ願いを持った二人になれないことがわかっているからこそ、まひるの独占欲が強くなっていくという描写は巧みだった。

 まひるの思考が、レヴューが始まる前から袋小路に陥っているのも切ない。仮に華恋を下して独占できたとしても、まひるが憧れたきらめきは失われる。そのことに気付かないフリをしていただけでまひるが一番わかっていたように思う。そしてまひる自身が憧れたのはひたむきに頑張る華恋だ。そのきらめきはひかりとの再会でさらに増していった。

 レヴュー終盤、華恋はまひるを置き去りにはせずに、まひる自身のきらめきを説く。"温かい歌"、"お日様みたいなダンス"、"朗らかなお芝居"―――華恋が発するその言葉はまひるのきらめきを示すだけではなく、まさに今回の話数を象徴している。筋としては切ない物語なのに、演出はコミカルで温かく、まひるが主役でなければ成立しなかった話数だった。まひる自身のキラめきのありかがこの第5話の演出で表現されていることに気づくとやはり気持ちが温かくなる。

 最後にインタビュー映像の続きが流れる。インタビュアーにどんなスタァになりたいか問われこう応える。

大切な人たちを笑顔にできるような

温かいスタァになりたいです。

 元々自身の中にあったきらめきを再認識することで幕が引かれる。個人的に興味深いのは、一年前の時点では華恋もまひるもくすぶっていたにもかかわらず、まひるは華恋にきらめきを見出していたというところだ。ひかりのようなポジションにはなれなかったが、今の華恋があるのはまひるの温かさがあってこそのように思う。あの日、まひるが華恋のきらめきを見つけたように、今度は華恋がまひるのきらめきに気づかせる。恋慕は叶わずとも、麗しい友情の物語だった。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第4話「約束タワー」

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あらすじ

 真矢とのレビューに敗北してから一夜が明けた。華恋は傍らにいるはずのひかりがいないことに気づく。寮内を探すも見つからず、ひかりに連絡を取ると外にいるようだ。ひかりから送られてくる断片的なヒントだけを頼りに都内の水族館をめぐり、街中をさまよう華恋が行き着いた先は東京タワー。目当ての水族館に入れず近くの公園で話す二人。華恋は負けないことをひかりに約束し、二人できらめいてトップスタァになることを誓う。

 

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感想

 今回はレヴューはなく、家出したひかりとそれに振り回される華恋が描かれた。二人の物語が主軸だが、寮生の連携が楽しい話でもあった。

 今回観ていて印象深かったのは、昨夜まで戦っていた舞台少女同士が、レヴューが終わると学友として互いに関わる様だ。オーディションが三夜まで終わった時点で参加者は互いに誰が参加しているのかをわかり始めているようだが、日常は日常として変わらず過ごすのは演技と現実とを分けて考えているからなのだろう(キリンに他言無用と言われているのはあるが)。あくまで舞台の上でしのぎを削る中であって、舞台を降りれば学友(香子ははめようとしたが笑)。 華恋とひかりのアリバイ作りに寮生全員が協力的だったり、早朝に帰ってきた二人を出迎えるシーンを見ると友人としての連帯感もそれなりに持っているようだ。

 そして肝心の華恋とひかりだが、やっとがっつりとした会話パートが描かれた。メッセージのやり取りから電話、そして対面で話す、という段階による演出が冷たい態度を取っていたひかりの心を溶かすようだった。とはいえ、わかりやすく家出したり、居場所のヒントを出したりと突き放しきれないのがひかりのチャーミングなところだ。

 演出的におもしろかったのは、華恋とひかりの電話シーン。お互いがいない間に起こったことや学んだこと、他愛もないことを伝え合うのだが、二人をカットバックさせながら描かれる。しかもカット毎に話題が変わり、お互いのヒストリーとその厚みがこちらにも伝わるようになっていて良い演出だなと思った。この描き方によって、せきを切ったような勢いのある演出になっているし、長い月日を経てやっと再会した関係であることがより染みてくる。

 オーディションについての会話で、キリンの言葉を借りて、トップスタァが一人じゃないといけないなんてルールはないと自論を展開する華恋。彼女なりに状況を考え把握しているのがわかる。とはいえそんな簡単にはいかないのは明白ではあるが果たしてどうか。

 オーディションから何としても遠ざけたかったひかりと、それでもきらめくことを選んだ華恋。東京タワーを見上げ、二人が共に頂きに立つことを誓うシーンがまぶしく映る。二人の目標が新たに定まった話数だった。