マミヤの忘備録

ラップ、映像、その他諸々について記したいなぁと思ってます。

「友情・努力・勝利」の向こう側『バクマン。』ネタバレレビュー

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こんにちは。マミヤ(@mamiya_7)です。

 

実写版『バクマン。』を先日観てきました。そのレビューを書いていこうと思います。

佐藤健神木隆之介小松菜奈山田孝之、そして染谷将太と、キャスティングが個人的にツボだったのと、予告で観たときのわくわく感がすごかったので、けっこう期待して観に行きました。

マンガの実写化としてはすごくよくできてるし、映画としてもおもしろいという個人的には大満足な作品でした。ではでは、さっそくレビューにまいりましょう。

 

 

 ジャンプの三大原則

いわゆるジャンプの三大原則とも言える「友情・努力・勝利」が実直に描かれているのが、この映画だろう。映画『バクマン。』は現在ジャンプに掲載されているものと比べても遜色ないほど、この原則を守っている。一見地味になりそうな「漫画家」という題材を実写でここまで熱く描けるのはすごいなと思った。

 

原作が連載されていた当時、何か苦手意識があって読まなかったのだけれど、この映画を観てその理由に気づかされた。(公開時期に電子書籍で1、2巻が無料だったのでそれは読んだけど)

 

ポリティカルコレクトネスへの配慮

マンガ原作の実写映画化において避けて通れないのは、実写化に向けてのアレンジだ。人物削減だったり、シナリオの圧縮だったり、挙げればいろいろとあるけど印象深かったのは、主人公たちの性格の変更だ。

 

原作で、二人は屋上に上がって女子の品定めをしたりなど、わりと歳相応の「いやなやつ」な部分を持っていたのだが、その部分がばっさりカットされている。(おそらく原作者はわかっててやっているんだろうけど)今思えば、わたしは、原作のそういう部分が苦手で早々にリタイアしてしまったのだろう。でも、この映画版ではいやな面はなりを潜め、夢のためにひたむきに走る少年二人の姿がつねに描かれるのである。

 

2時間ほどの映画でもあるので、要素の削減のために「いやなやつ」描写をやめたのかなと思っていた。先日配信された大根仁監督と糸井重里氏の対談を見て、その理由がわかった気がした。

対談のなかで「今までのサブカル層だけではなくて、女子高生たちにも観に来てほしい」という趣旨のことを言っていたのだけど、この発言で、先の「いやなやつ」描写がなくなったことに合点がいった。

 


対談『映画「バクマン。」があまりに面白かったから』 - YouTube

なるほどたしかに、メインターゲットとして据えている女子高生たちに、主人公らが品定めをしているシーンを見せるのは、女子の側からしてみると物語に没入することへのノイズになりかねない。下手すればミソジニ―的な捉えられ方をされて、監督たちの意図しない気持ちを抱かせてしまうかもしれない。

 

こういった配慮が主人公二人をクリーンで夢のある若者へと変化させていったのかもしれない。

 

「友情・努力・勝利」以外に描かれたもの

この映画、オチを端的に述べると「勝負に勝って試合に負ける」展開で幕が下りる。ビターではあるがそこに悲壮感はない。サイコーとシュージンはジャンプの三大原則に実直なまでに従った、従ったがゆえに映画では最後に負けた。それでもサイコーとシュージンは、変わらず走り続けるだろう、という予感を持たせて終わる。ここに大根監督のさらなる配慮が垣間見える。

 

「女子高生をメインターゲットに据えた」と監督は言っていたけど、実際はもっと幅広い層も想定しているように思われる。「友情・努力・勝利」なんて言っても現実はきびしいよ、という気持ちを抱く人も少なくはないだろう。特に中高生よりも上の世代は、その先にあるものを何度も経験してきているだろう。だからこそこの結末にしたんじゃないだろうか。原作のように全てを掴んで完全に勝利するようなものではなく(原作最終回は、連載当時どんなオチかなと思って読みました)、失敗してしまっても人生は続いていくし、自分が終わらせない限り、夢は終わらない。そのことを表現するために、スラムダンクのオマージュとも言えるあの悲壮感のない敗北を描いたようにわたしには思えるのだ。

 

週刊少年ジャンプの流儀

原作マンガからの引き算が多いにもかかわらず、大根監督の製作姿勢が極めてジャンプ的に映るのはなぜか。それは、幅広い層に受け入れられるために配慮を惜しまないこの姿勢が、最大を取りにいってこそ頂点を極めることのできるジャンプの流儀そのものだからだ。

 

要素を厳選していくことで薄味になるのではなく、逆にテーマが浮き彫りになっていき、幅広い層にも訴求する展開へと落とし込んでいく。少年マンガ(特にジャンプ作品)の映画化として模範となるような清々しさが、映画『バクマン。』の中には詰め込まれている。

 

余談

例のスタッフロールには涙腺がやられそうになりました。『ランプランプ』のパロディがあったり、巻数の少ないマンガも取り上げられてていいなぁと。そしてスタッフロール後に出てくるあの文章。たしかにあれで終わらせないと『ジャンプ』じゃないよねっていう妙に納得いく落とし方でした笑。ほんとにリスペクトにあふれた素敵な映画でした。未見の方はぜひ!原作知らなくても楽しめると思います!

 

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初レビューだったんですが、思いのほかどういう風に切り込んでいいかわからず…。とりあえずテーマっぽいことでまとめましたが、いかがでしたでしょうか?

小松菜奈ちゃんのことやサカナクションの音楽とか書きたいことはあるのだけど、なかなか内容に入れ込むのが難しいものですねぇ…。好きだからといって最初から上手にはいかないなと、しょっぱなから壁に当たってしまいました笑

めげずにこれからもレビューを上げていきたいと思います!のんびりやるとは思いますが、これからよろしくお願いします。

 

マミヤでした!ではでは。


「バクマン。」予告 - YouTube