ごきげんよう♪
マミヤ(@mamiya_7)です。
『映画 Go!プリンセスプリキュア 』を観てまいりました。まばらに座るお子様たちの後方での鑑賞となりました。
例年通り、テレビシリーズが佳境を迎えるタイミングでの単独映画公開でございます。しかし今年は、タイトル通りの三本立て!ハロウィンを共通のテーマにして、さまざまなタッチのプリンセスを楽しめます。
三本立てという新たな試み、プリキュア映画19作目にして意欲的な姿勢を持って制作されたタイトルですが、この試みは今回の映画にどんな影響を与えたのでしょうか。
小編(CG)、長編(セル)、中編(CG)と続けて紡がれるハロウィンの物語の数々、それらを順にみていこうと思います。
先におことわりしておきますが、わりと辛口な部分もあるので、本作が大好きな方はご注意を。
では、レビューのスタートです!(例によってネタバレ込みこみ!)
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小編『キュアフローラといたずらかがみ』
あらすじ
キュアフローラと鏡に潜むいたずらおばけとの、カチューシャをめぐるはちゃめちゃコメディ。
シリーズ初セリフなしの作品。ディズニーなどもよく用いるつかみとしてのショートムービー。
デフォルメされたフローラや5匹のおばけたちがかわいくてわりと楽しい。でも、正味5分ほどの劇中でミラクルライトを4回振らせる展開はうーん…。
ライトを使用するときはだいたいピンチに使うことが多いのもあるからか、子どもたちの乗り切れてない感じが伝わってきたり…。
カチューシャがこわれたときにおばけたちがライトを振るように促す、とかの方が乗りやすかったかもしれない。振る回数よりも、どうやったら振るところまで持っていけるかの方が大切なように思う。
いろいろと書いたけど、CGキャラのかわいさだけで楽しめる作品ではあるので、(ライトの扱いは雑だけど)つかみとしてはいい!
長編『パンプキン王国のたからもの』
あらすじ
春野はるか(声:嶋村侑)たちは、おとぎの国のようなパンプキン王国にやってくる。この国のプリンセスがお城に閉じ込められていることを知ったはるかたちは、パンプキン王国の未来を取り戻すため、プリンセスの救出に乗り出す。(Movie Walkerより)
三本立ての中で一番わりを食ってしまったのがこちらの作品。物語は劇場版によくある番外編といった感じ。
作画のクオリティはしり上がりによくなるし、テンポのいい妖精ギャグも緩急をつける意図としてはよかった。では肝心のテーマはどう描かれたのか。ここからは少し辛口になるのでご容赦を。
テーマへの掘り下げについて
今回の長編におけるテーマはずばり、家族愛である。最後のパンプルル(パンプキン王国のプリンセス)と王様と妃の抱擁がそれを物語っている。家族愛がテーマとなることは、観客層から観てもまっとうだと思うし、親世代にも物語を楽しませることができるなら、この上なくすばらしい映画体験になるだろう。
…しかしこの長編、少々テーマに関する描写が足りないのだ。
三本立てによる時間の短縮が原因なのだけど、とにかくテンポがよすぎて描写が最小限にとどまっている展開が多い。 さらにフローラ以外は扱いがあまりよくない。
従来通り一本の単独映画だったなら、もっと筋の通ったものになっていたと思う。プリンセスプリキュアのメンバーは全員、テレビ本編で家族のエピソードが描かれたし、それを活用して家族愛というテーマのもとに全員が活躍する展開だって望めたはずなのだ。
脚本上の問題は他にもいくらかあるけど、スケジュールがガチガチだったりなど、もはや作り手の問題というより東映自体が慢性的に抱えてる問題なので仕方ない部分もあるとは思う。でも、うーん…。
製作の話は置いておいて、内容に目を向けよう。
テレビ本編では、「希望が剥奪される」ことが話の転換点やきっかけになっていることが多いのだが、その部分も描写不足な感は否めない。このことが物語の起伏を削ぐ結果となっている。
例えば、娘のことがもはや思い出せないほどに私利私欲にまみれる両親の姿を見て、どん底まで絶望するパンプルルの姿を終盤にいれるだけでも、物語に起伏が生まれるだろう。「すでに希望を奪われた王国なのに、さらなる絶望がパンプルルを襲う」という展開にすれば、逆転のときのテンションは跳ね上がるし、プリキュアたちの奮闘も映える。最後の王様と妃が宝石やアクセサリーをキャストオフしながらパンプルルを抱きしめるシーンも、より感動的になったに違いない(実際、映画でもここはよかった)。
希望を捻じ曲げて人を変えていくウォープのやり方がトワの闇落ちを想起させたりなど、おもしろい要素はいっぱいあった。だけど、プロットなどを練り直すにはとにかく時間がなかったんだろうなと思う出来になってしまった。
ここまでいろいろ書いたけど、好きなシーンもある。パンプルルのペンダントからカボチャの種が出て、大樹になり、その樹の実がプリンセスミラクルライトになるという一連の流れは、なかなか絵になっていて好きだった。何度も書いてしまうけど、描写をちゃんと積み上げていけばすごくいいシーンになったと思う(ライトの登場にも無理がない)。
プリンセスパレスを用いてのプリキュアたちの合体攻撃をセル画で観れたのもうれしかった。やっぱり手書きの迫力はすごい。
『パンプキン王国のたからもの』は従来通りの単独映画なら化けたはず!三本立てでやるにしても、やりたい展開と尺とが見合っていなかった。本当に惜しい作品だった。
中編『プリキュアとレフィのワンダーナイト!』
あらすじ
夜の闇に閉ざされた国・パンプキングダムに飛ばされてしまったプリキュアたちは、その国に暮らすレフィ姫(上垣ひなた)とともに、パンプキングダムに光を取り戻すべく奮闘する。(Movie Walkerより)
中編にあたるこの作品は、テレビシリーズの後期EDでもおなじみ宮本浩史氏の初監督作品である。
構成を簡単に書くと、逃走劇と潜入劇そして決戦となっている。こちらもテンポのいい作風ではあるのだけど、上映時間に見合った展開で観客を楽しませる。逃走時と潜入時のシーンが「これぞ女児アニメのパルクールだ!」と言わんばかりで、華麗に舞うプリンセスたちに思わず見惚れてしまう。CG表現も、日本のアニメとCGの融合もここまで!というほどによくできてて驚いた。初監督作でこの出来はすごい。
次に、描かれた内容はどんなものだったかをみていこう。
夜明けをもたらすプリンセス
長編と同じくこちらにもゲストプリンセスのレフィが登場するのだが、プリンセスプリキュアのメンバーと絶妙にキャラがかぶらないおてんば娘だ。劇中ずっと出ずっぱりで、決して長くはない上映時間の中でも強く印象に残るキャラになった。
長編のパンプルルが終盤まで冷たい檻に幽閉されているのに対して、レフィは自ら助けを求めてプリキュアに接触したり、積極的なキャラとして描写される。自らおとりになりプリキュアたちを助け、戦いにも参加していく、そして最後はプリキュアたちの後押しを受けて自らの夢をつかみとるのだ。
テレビ本編では、閉ざされた「夢への扉」を開くことがプリキュアたちの使命であり、錠前(ゼツボーグ)を開くまでが彼女たちのできることである。この中編ではそのことがさらにわかりやすく描かれていて、レフィの夢(=パンプキングダムに太陽を取り戻すこと)を手助けすることがプリキュアたちの役割となる。元凶であるナイトパンプキンの城の頂上にプリンセスミラクルライトをはめれば永遠の夜が終わるのだが、プリキュアたちはその目標に向かうレフィのアシストをするだけであり、あくまでミラクルライトをはめるのはレフィの役目なのである。いつもは夢が閉ざされた状態をプリキュアが救うというパターンなので、現在進行形で夢を手助けしていくというのは、劇場版ならではのおもしろい展開だ。しかもこのように展開することによって、「夢は自分の手でつかみとるもの」というプリンセスプリキュアのテーマを濃縮するような物語となっているのだ。
それと劇中の人々の描かれ方もおもしろくて、パンプキングダムの人々のなかで危機感を持って行動しているのはレフィ一人なのだ。他の人々は楽しそうだし、なに不自由なく暮らしている風に見える。もしこの物語が長編だったなら、楽しそうに暮らす人々がレフィをほだそうとしてくるがそれを拒否し、たとえ周りが敵だらけになったとしても、プリキュアとともに前に進んでいくという展開になったのかもしれない。与えられた楽しさに堕落するのではなく、自分から夢をつかみにいく女の子の物語として、さらにテーマが浮き彫りになったのかもしれない。構成がよいと想像も膨らむ。
プリキュアに叶えてもらった夢 - HIROSHI MIYAMOTO BLOG
ぜひこちらもどうぞ。レフィに託した監督の思いとプリキュアへの感謝が綴られていて、目頭が熱くなってしまいました。
宮本浩史監督、これからの東映アニメーションを担う人物だと思います。
三作品のつながり
ハロウィンをテーマに紡がれた三つの物語だったが、各物語の要素のつながり方はそこまで深くない。小編の「鏡」という要素は、続く長編でもウォープの用いる鏡の牢屋として登場したり、長編から中編へのつなぎとしてレフィの人形が登場するが、深くは描かれない(脚本上のずれもありそう)。
それぞれ独立した三本の作品という形にしたくないのは伝わるのだけど、ちりばめられた要素がそれぞれのブリッジになっていたかというと微妙なところ。
しかし、きっと今回の試みがこれからのプリキュア映画の糧になるに違いない。なぜなら、失敗をおそれず、最後に夢をつかみとるプリキュアたちのスピリッツをスタッフのみなさんも持っているはずだからだ。
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余談
「冷たい檻に閉ざされた夢、返していただきますわ!――お覚悟は、よろしくて?」
のシークエンスがなかったり(はまったきっかけのセリフだったので個人的に残念)、パンプキン王国民のゼツボーグ狩りの様子が『ジョジョの奇妙な冒険』4部の重ちーのスタンド「ハーヴェスト」の統率の取れた連携にしか見えなかったり(ゼツボーグってエヴァのエントリープラグみたいの引っこ抜いたら浄化できるんかい!)、まだまだいろいろと言い足りないこともあるのですが散漫になるのでこのへんで笑
本作は、CGアニメに注力してるところを見る限り、かなりピクサーを意識している部分があると思います。いろんな層に配慮し、さまざまな方法でアプローチするのはいいなと思うのですが、つねに納期が迫っているような多作な状況の弊害をもろにかぶっていたように、わたしには映りました。東映が日本のピクサーになるには、まず慢性的なスケジュール地獄をどうにかしないといけないのではないかなと(実際なる気はないのかもしれませんが)。
ゴープリは情操教育という意味でもかなりいい題材だと思うので、今回の映画ももっとよくなったのではと思ってしまいます。
しかし、「つよく、やさしく、美しく」困難に立ち向かうプリンセスたちを劇場で観られたのはとてもうれしかったです!
いろいろと辛口になった部分もあるとはいえ、やはりプリキュアです!楽しめる部分も多いと思うので、童心に帰った気持ちになって映画館へ足を運ぶのもよいのではないかなと思います。
↑はED。曲も振り付けもCGもぜんぶ大好き!
というわけで、マミヤでした。
ごきげんよう♪
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映画 Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!
2015年,日本
配給 東映
スタッフ
『キュアフローラといたずらかがみ』
監督 貝澤幸男
CG演出 日向 学
CGディレクター 中沢大樹
『パンプキン王国のたからもの』
監督 座古明史
脚本 秋之桜子
キャラクターデザイン・作画監督 香川 久
美術監督 須和田 真
製作担当 山崎尊宗
『プリキュアとレフィのワンダーナイト!』
監督・キャラクターデザイン 宮本浩史
CGアニメーションスーパーバイザー 金井弘樹
美術監督 真庭秀明
キャスト
キュアフローラ/春野はるか 嶋村侑
キュアマーメイド/海藤みなみ 浅野真澄
キュアトゥインクル/天ノ川きらら 山村響
キュアスカーレット/紅城トワ 沢城みゆき
パフ 東山奈央
アロマ 古城門志帆
七瀬ゆい 佳村はるか
パンプルル 花澤香菜
レフィ 上垣ひなた