マミヤの忘備録

映画やアニメの感想など自分の趣味について記したいなぁと思ってます。

青春のイニシエーション『心が叫びたがってるんだ。』ネタバレレビュー

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心が叫びたがってるんだ。

2015,日本

配給 アニプレックス

 

スタッフ

原作 超平和バスターズ
監督 長井龍雪
脚本 岡田麿里
演出 吉岡忍
プロデュース/企画 清水博之、岩田幹宏
キャラクター・デザイン/総作画監督 田中将賀
美術監督 中村隆
CG監督 森山博幸
音楽 ミト(クラムボン
制作 A-1 Pictures

 

キャスト

成瀬順 水瀬いのり
坂上拓実 内山昂輝
仁藤菜月 雨宮天
田崎大樹 細谷佳正
城嶋一基 藤原啓治
成瀬泉 吉田羊


映画「心が叫びたがってるんだ。」予告編 - YouTube

 

 

※ネタバレも込みこみですのでご注意を!

――――――

 

言葉で人を傷つける経験、それは人生歩んでいれば誰しもにあるだろう。

言葉は、他者に対して明確に意志や感情を伝えることができる反面、ときには自分の意図以上のものを相手に与えてしまう。だから、言葉は薬にもなれば刃にもなる。

 

本作の主人公、「成瀬順」は言葉で家庭を崩壊させてしまった経験がある。順は意図せず父の不貞を母親に伝えることになってしまい、それから両親は離婚。(実際のところは親父が全面的に悪いのだけど)父から去り際に「全部お前のせいじゃないか」と言われ、そのトラウマから声を出せなくなってしまう。その過程は、「玉子の妖精」が口をチャックし、呪いをかけるという形で表される(あくまで順のイメージだけど)。

順は高校生になってもその呪いを克服できずにいる。担任の城嶋の独断で「地域ふれあい交流会」(通称:ふれ交)の実行委員の一人に選ばれるが、当然人前に出るようなことはしたくなかった。しかしひょんなことから会話ではなく、歌ならば声を出せることがわかる(声を出すと腹痛が起こる)。そして催し物としてミュージカルをすることが決まり、それに打ち込んでいくこととなる。

というのがおおよそのあらすじ。

展開も、この実行委員の4人に焦点が当てられ、4人それぞれに何かしらの声や言葉にまつわるトラウマやエピソードが差し挟まれる。意志疎通のままならさやあのとき声をかけておけばという後悔など、どこか自分に照らし合わせてしまうような既視感を覚えた。

 

 

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終盤、本番に向けて準備している中、実行委員のメンバーである「坂上拓実」と「仁藤菜月」の会話を盗み聞きしてしまう順。拓実に惹かれていた順はショックから本番をドタキャンしようと、父の不貞を目撃した「お城」(=ラブホテル)に逃げ込んでしまう。

本番が始まる中、拓実は息を切らせながらお城に閉じこもる順を見つける。「声を出したから不幸になったんだ」と叫ぶ順に、拓実は思ってることを全部吐き出せと言い、順のままならない気持ちを吐き出させる(ここは拓実の対応が大人すぎる気もするけど)。「根本的に自分を苦しめるものがわからない、けど、心が叫びたがってるんだ」と言わんばかりに目の前の相手に罵詈雑言を浴びせる順、その姿は今まで出せなかった声を取り戻そうとするようでもある。このお城でのシークエンスに対して問題が恋愛に矮小化してるという意見もあるし、なるほどとは思う。けど、問題をしっかり捉えられず感情が爆発するというのも、学生時代の青さを感じられていいのではないかなとも思う。親子の問題が根本的に解決していないという意味では、学生時代を終えたあとにも、彼女らの物語はこれからも続いていくとも言えるかもしれない(続編があるかもということではなくね)。玉子から孵化した順は、これからどのような道を歩んでいくのだろう。

 

嫌な思いをしてしまうことは人とコミュニケートする上では仕方ないところでもあるし、誰もが誰も子どもとしていっぱい傷つき、ままならない思いを経験する。抱いた焦燥感の分だけ痛みを感じるだろう。その痛みを伴い、子どもから大人になっていくことが、学生時代の、引いては青春時代の通過儀礼なのだと思う。本作はそのことを、言葉を主題として思い出させてくれる。やがて彼女らも大人になれば、それらを幾分かは抑えたり避けたりすることができるようになるのだろう。

 

映像や演出面に目を向けよう。序盤から荒唐無稽な描写が続く本作だが、それゆえにアニメーションの利点を最大限に活かした演出が多い。順の内面世界などはその最たるもので、夢見がちな少女であるという性格とも相まって、単に日常を描くだけではない映像美がある。

肝心のミュージカルシーンやその練習なども演出が上手くて、拓実役の内山昂輝の絶妙な歌い慣れてない男の子っぽさはすごいなと。あとミュージカルのフィナーレの曲が「ピアノソナタ第8番『悲愴』」と「Over The Rainbow」のマッシュアップだったのはよかった。バッドエンドとハッピーエンド、それぞれに対応する楽曲なのだけど、どっちもやるというごちゃごちゃ感もまた登場人物の内面とリンクさせてるみたいでおもしろい(両楽曲のメロディがかぶってて歌詞が聞き取りづらいのもご愛敬か笑)。

昨今では、邦画(特に大作物)は心情などをセリフで説明しすぎると揶揄されるが、本作は言葉で何かを伝えることをゴールにしてるおかげか、あまり説明過多に感じずにすんだ。とはいえ、これがもし実写だったら演出がくどくなりそうなので、アニメという媒体だったのも功を奏したのかなと。

 

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余談

 こんにちは♪マミヤ(@mamiya_7)です。

少し前になりますが、TOHOシネマズ新宿で観て参りました。

 

週替わり特典があるとはいえ、邦画のアニメで長期間やるのはすごいなぁと思ってました。アニメーションの美麗さはさすが劇場用という感じですね。重めな話ではあるけど、順のテンションの上下が激しく全体のトーンはずっと暗いということはないです。

最近の岡田マリー脚本は恋愛に落とし込むような展開が多いように思うのですが、けっこう意図的なんだろうなと本作を観て思いました。

 

では、また次のレビューでお会いしましょう。

マミヤでした♪

 

 

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 ↑『ここさけ』は自分から気持ちをさらけ出してくスタイルですが、こちらは社会からいろいろなものをさらけ出されちゃう世界観です。