あらすじ
「普通のリア充」になるため心機一転、登校し始めた善子。おかしなことをしないように花丸に監視を頼むが、 結局クラスメイトの前で「堕天使ヨハネ」が出てしまいスクールアイドル部の部室に引きこもってしまう。
逆に千歌は堕天使姿の善子を見てAqoursへとスカウト。スクールアイドルランキングが伸び悩んでいたAqoursのブレイクのきっかけに、善子を加入して堕天使アイドルとして押すことを決める。
思惑通りランキングが急上昇するも、無理矢理立てたキャラで得た人気など一時的なものに過ぎないとダイヤに一蹴され、事実その通りに順位は下落。責任を感じた善子は堕天使もAqoursもやめることを決意し、千歌たちのもとを離れる。
明朝、ゴミ置き場に堕天グッズ一式を捨てているところに、千歌たちが再びスカウトにやってくる。思わず逃げ出す善子、追いかける千歌たち、広い沼津の街を疾走する。ランキングが落ちたのは善子のせいではないと説得を試みる千歌。
「善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ!自分が堕天使を好きな限り!」この一言に善子の心が動き、また新たにAqoursのメンバーが増えるのだった。
感想
サブタイトルと前半のノリでコメディ回かと思いきや、シリアスな場面もあり、善子の様々な面が見られる回になっています。
善子というキャラは「普通星人」を自称する千歌と対照的で、特別であろうとしてそれに挫折したキャラです。
堕天使をあきらめ、普通の高校生に戻ろうと決心した矢先に千歌に目を付けられて、スクールアイドルとして活動します。しかし、結果的にAqoursの堕天使戦略は裏目に…。長らく一人で行動していて、誰かの役に立てるという気持ちもあったのか、善子は負い目を感じてしまいます。
自分のキャラが誰にも理解されなくて、せっかく頼りにしてくれた人たちにも迷惑をかけてしまった。そんな現実を目の当たりにして善子は「吹っ切れた。高校生にもなって通用しないよ」とAqoursから離れることを決めるのですが、このときの善子の声がヨハネの低音とも、いつもの善子の高音とも違う声で小林愛香さんの声色の多彩さを感じさせます。
明朝、千歌たちは善子の元へ訪れ「堕天使が悪かったんじゃなく、私たちが悪かったの!」と善子の責任ではないと謝り「善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ!自分が堕天使を好きな限り!」と伝えます。ここで「好きな限り」と付け加えてるのがミソで、あくまで「やりたいかどうか」というのが大事なんですよね。だからこそ、付け焼き刃でしかなかった堕天使戦略は通用しなかった、そして、堕天使であろうとするヨハネはAqoursにとって必要だったという展開になるんです。その後のヨハネの問いにそれぞれのスタンスで返す場面での、自分の価値観を大事にし、相手の価値観もまた尊重する姿勢はメンバーの成長を感じさせます。
善子は幼少期に天使に憧れ、いつしか堕天使を自称するようになりました。その振る舞いは、自分はキラキラした存在ではないかもしれないけど特別でありたい、という気持ちが現れたものだったのかもしれません。堕天使という表現こそが彼女なりの挫折からの再起であり、現実への処世術なのだと思います。
現実との軋轢が自身の中で限界を迎えるけれど、背中を押されて最終的には善子自身の意志によって再び堕天する、というオチでしたが、理解者のいない孤独と認められた歓喜に想いを馳せる話数でした。
堕天使の象徴でもある黒い羽。それを千歌から受け取り、ヨハネが再臨します。