マミヤの忘備録

ラップ、映像、その他諸々について記したいなぁと思ってます。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第12話「レヴュースタァライト」

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あらすじ

 ひかりの運命の舞台。それは戯曲“スタァライト”を一人で演じることだった。共演者もなく、裏方もなく、キリン一人を観客とし、ひかりは石を積み上げ、それが星によって砕かれるシーンを繰り返す。

 やって来た華恋は、誰のキラめきも奪わないために一人、孤独に芝居を続けるひかりを見て涙を流す。たまらず言葉をかける。

「帰ろうひかりちゃん。私たちの“スタァライト”はまだ始まってない!」

 「どうして会いに来るのよ、会いたく、なっちゃうじゃない」

 芝居が止まり、舞台装置は動き出す。

 “スタァライト”を始めるために、最後のレヴューが開演する―――。

 

 

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感想

 外界の様子も要所に入れつつも、基本的には華恋とひかりの“スタァライト”が描かれた。

 賽の河原のように小さな星を積み、そのたびに大きな星に砕かれるというシチュエーションは、共演者もなく、裏方もなく、観客もなく、独りで舞台を演ずる主演―――死せる舞台少女としてあまりにもはまりすぎていた。

 本作は“繰り返し”というモチーフを要所に入れ込んでおり、最終話も例に漏れない。賽の河原のように星を積み上げる場面もそうだし、それに付随するフローラとクレールの台詞もそうだ。この“繰り返し”はゼロになってしまうことだけを描いているわけではない。同じ動きをしながら、しかし高みへと行く螺旋階段のように“積み重ね”も同時に描かれている。それは華恋とひかりのシーンだけではなく、今回の鍋パーティのシーンでも表現される。まひるがひかりの好みを熟知していたり、クロディーヌのフランス語を純那が聞き取れたりとそれぞれの素朴な成長を通して、日常という変わらないルーティンの中で変化し前に進んでいることがわかる。

 そしてレヴューシーンでも当然、“繰り返し”と“積み重ね”が描かれ、レヴュータイトルも“星罪のレヴュー”から再生産され“星摘みのレヴュー”となる。ここから戯曲は様変わりする。願いを叶えるために星を摘み、その罪によって想い人と離れることになった悲劇から、想い人と離れたとしても幽閉された塔へと立ち向かう物語になる。同様に華恋とひかりのレヴューも変化し、さらに2人だけでなく、オーディションの意味合いすらも再生産が成される。舞台少女たちがライバルの“キラめき”を自らの願いのために奪い合う罪人たちの物語から、互いに高め合い“キラめき”を灯し合う物語に昇華している。

 舞台少女の罪を一身に背負うひかりの覚悟、その象徴とも言える片割れの塔。そこに向かうため自らをさらに再生産した華恋のキラめきに呼応して東京タワーが現れるシーンは圧巻だ。“約束タワーブリッジ”―――二人の思い出の場所を、罪を背負い塔に幽閉されたひかりのもとに上るための舞台装置とすることで、観ているこちらも共鳴し感情が高ぶった。そしてまだ観ぬ物語―――再生産された“スタァライト”が披露される。

 ひかりのもとまで来た華恋は、ひかりが自分にとっての“舞台”であることを告白する。“舞台”とは他者との連帯があって初めて生じるものだ、それが一人芝居であったしても。役者の演技はもちろん、裏方の働き、観客の視線、様々なものが連関して初めてステージを織り成すことができる。

 演者が舞台に立つのは自らの夢のためだ。しかしそれは裏返せば誰かのためでもある―――その誰かが舞台少女たちにとっては運命の相手とも言えるだろう。それを今回の“再演”で舞台少女それぞれが自覚した。自分をキラめかす相手、自分がキラめかせる相手、それを自覚することで繰り返す日々の中で刺激し合い進化していった。

 “舞台”とは人と人とが織り成す関係性の中で紡がれるもの―――それをひかりとの再会、そして消失を経た華恋が自覚して、“スタァライト”を新たに生まれ変わらせる。舞台少女たちの関係を強く描き出し、彼女らの関係の中で編まれてきた物語だからこそ出せた結末だった。

 最後に少しだけ、観客としての言葉を添えたい。先にも書いたが舞台にはキャストやスタッフだけではなく観客も必要だ。それはキリンが劇中でも端的に述べていた。辛い物語であっても観るものが“求める”からこそ彼女らは演じる―――観るこちら側にもその責任を、つまり罪を背負わせるということだ。罪を自覚しながらもその先が観たい、良い結末を迎えて欲しい、とわたしは“望んだ”。そして観たい結末を観せてくれた、そのことに感謝したい。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第11話「わたしたちは」

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あらすじ

 トップスタァとなったひかりは誰のきらめきも奪わず運命のレヴューを開幕―――。

 次の日にはひかりは退学し、姿がどこにも見当たらなくなる。華恋は色々な手段を取るが、ひかりは見つからない。

 時間は経ち第100回聖翔祭が近づくが華恋は舞台への気持ちが冷めていることを自覚し、身をもってひかりの辛さを痛感する。

 華恋はひかりが残した英文のスタァライトの戯曲本を訳していくが、そこで舞台とは違う展開があることに気づく。学校へと行き、かつてエレベーターがあった場所で想いの丈をぶつける華恋、すると地下の会場への道が開かれる。7人の舞台少女の想いを受け取りながら、華恋はひかりの下を目指す―――。

 

 

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感想

 ひかりとの別離を経て、華恋やひかりを取り巻いていた環境の変化が描かれた。印象的なのは、きらめきを失っていく華恋もそうだが、環境がひかりなしでも動き変わっていくことのリアリティだ。

 ひかりがいなくなることは華恋にとってはあまりにも突然で悲しい出来事だが、対外的には退学手続きをすませキレイに学園から去った人の一人という扱いで、華恋の激情と反比例するかのように、環境や社会といったものは冷たく起こったことを華恋に突きつける。

 華恋はさまざまな手法でひかりを探すが、その度に現実を突きつけられるという展開は巧みだった。先生に問い合わせても、警察に駆け込んでも、ひかりの古巣に手紙を送っても、手がかりは見つからずその度にひかりの不在を認識する。そしてそこから華恋のきらめきが失われるというロジックも面白い。華恋の再生産の原動力はひかりとの約束だ。ひかりにとっては誤算だったのかもしれないが、結果的にきらめきを奪うことになるのはなんと皮肉か。しかしそのおかげでひかりの置かれた状況を自覚するという流れは物語がしっかり連関しており、悲しい話ではあるものの展開を見ていて気持ちが良い。

 華恋はスタァライトの英文を訳し始め、舞台との違いに気づく。それは星を掴んだクレールが罰として塔に幽閉されているというもの。それをヒントにひかりはオーディション会場にいると予感し、華恋はバールのようなものでエレベーターがあった壁を叩くが、ここが一番現実を感じる瞬間だった。叩く度に壁が削れ、その奥にはただ分厚い壁がさらに続くことを思わせる描写、あまりにも非情だがリアリティを一番感じた。

 華恋の想いが通じ、学園内に電気が灯もり、エレベーターが出現。この“光”が点いていく場面もひかりを思わせ、クライマックスのテンションを高揚させる。そこから7人の舞台少女の言葉を受けながら、幕間として流れるのは『舞台少女心得』だ。「わたしたちは舞台少女」という歌詞がある。彼女たちはみな現実に生きているが、舞台の上に立てば自らを脱ぎ捨て再生産し、舞台という虚構の中に身を投じる―――ひかりを救うには現実の中で対処するのではなく、もう一度舞台の上で連れ戻さなければならないことを示唆しているような歌詞だと思う。

 また、「舞台少女は何度でも生まれ変わることができる」とは真矢の言葉だが、虚構であったとしても舞台の度に新たな真実を演者や観客が宿していく、その気持ちこそがまさにオーディションに必要なきらめきなのだと思う。だからこそ華恋は情熱に導かれ、幽閉されたクレールという真実をあばき出し、ひかりの下へと続く道を見つけられた。

 舞台という虚構、しかしそこで注がれる気持ちこそ真実を宿し、観るものを魅了する。最後のレヴューの結末をしっかりと見届けたい。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第10話「されど舞台はつづく The Show Must Go On」

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あらすじ

 オーディション最終日を知らせる着信。舞台少女はそれぞれ思い思いに過ごし。華恋とひかりは以前入れなかった東京タワー水族館へ行く。ひかりは幼い頃に交わした約束への感謝を述べ、レヴューへと赴く。

 舞台には華恋、ひかり、真矢、クロディーヌの4人。その他の舞台少女は客席から見守る。参加人数でイレギュラーが発生したため今回は2対2のレヴューに。ひかりと真矢はそれぞれ華恋とクロディーヌを指名する。

 トップスタァをかけたデュエットの行方はいかに―――。

 

 

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感想

 ついに訪れたオーディション最終日。Aパートはそれぞれの過ごし方が短いながらも丁寧に描写された。ななが純那に感化され名言を引用し変化を肯定したりと、前回からの物語のバトンもしっかり繋がっている。

 今回は華恋とひかり、そして真矢とクロディーヌの物語。前者は4話のように都内を観光する。そのきっかけになったのが、「水族館にまた行こう」という約束を華恋が思い出したから、というのも良い演出。どんなに離れたとしても、忘れかけたとしても、絶対に思い出し、巡り会う。二人の関係性を率直に表した描き方だ。お互いの髪留めを止めるシーンも印象的で、幼い頃に抱いた夢だけは変わらずに成長したことが表されていて好みだった。とはいえ不穏なところも散りばめつつ、最後に二人はあの結果となるが、それは次回への引きでもあるので、次に真矢とクロディーヌについて見ていく。

 お互いが強く惹かれ合っている、というのを華恋とひかりでは記憶という形で表現されたが真矢とクロディーヌも同様だ。クロディーヌにとっての屈辱の過去であり、舞台少女として新たに生まれるきっかけになった入学試験の日のことを、真矢はしっかりと覚えている。華恋とひかりのような約束はそこにはないが、それを記憶しているというだけで華恋たちとは違う運命がそこに表されている。

 子役としてスターダムを駆け上がるクロディーヌにとって初めての敗北が真矢という存在。そして孤高の天才である真矢にとっても対等な立場で食い下がってくる相手はクロディーヌが初めてだったのではないかと思う。だからこそずっと憶えていた。「負けてない」と敵対心を露わにされてもなお、真矢は憶えていた。忘れられるはずがないのだ。お互いにとって初めて覚える感情、そしてその対象は絶対の相手になり、レヴューデュエットまでお互いを導く。

 レヴュータイトルは“運命”。曲は『Star Divine』。『ラブライブ!』シリーズなどでも過去の楽曲を大一番に使うという手法は成されたが、本作はさらにレヴューという性質上、レヴューの出演者のみによる歌唱となっている。

 激しい剣戟の末、勝利を掴んだのは華恋とひかり。レヴュー終了後、クロディーヌは「負けたのはわたし、私だけよ…天堂真矢は負けてない」と涙まじりに訴える。クロディーヌの気持ちを想うと胸が痛くなるセリフだ。トップの成績である真矢が負けるはずがなく、もし負けたとするならそれは自分のせい―――自分の“負け”を認めてまでも真矢の孤高を守ろうとするクロディーヌのこのセリフは響くものがある。さらにその後、フランス語で嗚咽を漏らすクロディーヌにやさしくフランス語で語りかける真矢。クロディーヌの反応的に初めてフランス語を喋ったのだろう。他の舞台少女と言語的な断絶を加えることで、二人以外は理解できない会話になっていて、トップの者たちしか持ち得ない孤高が描かれていたように思う。

 そして真矢があくまで負けたのではなく、あの二人の方がスタァライトにふさわしかった、と言うのも面白い。どちらも最高のデュエットを放ち、その末に舞台が選んだのは華恋とひかり。舞台は生ものだ、という話もあるが、まさにその所以を見るような物語だった。人は変化し、関係も変化していく、華恋みたく言えば日々進化中なのだ。真矢とクロディーヌにとって結果は不本意だったが、それ以上にかけがえのない相手に気づけたことは財産だろう。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第9話「星祭りの夜に」

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あらすじ

 第100回聖翔祭に向けて制作が続く。脚本が上がり、キャストはそれぞれの衣装のアレンジを提案したりと、舞台をよりよくしようとそれぞれの想いが募っていく。そんな中、今までの再演どおりに行かないことにななは憤りを隠せない。ななの異変に気づく舞台少女たちだが、原因がわからず何も出来ない。

 道具置き場に佇むななを心配してやってくる純那。ななが選んだ“運命の舞台”を知る。

 きらめいた時を繰り返そうとするななと、未来に向かうことでさらにきらめきを目指そうとする華恋。二人のレヴューが始まる―――。

 

 

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感想

 スタァライトはどの話数も物語が上手いなと思うのだけど、この話数は今までの積み重ねを上手く昇華してるのもあってトップクラスに脚本の巧みさが光っている回だった。

 物語の冒頭から、いつもの母性に溢れ飄々とした佇まいのななはそこになく、今回は今までに“見たことない”なながそこにいた。

 レヴューのタイトルは“絆”。そして相手は華恋。未来を目指す者と過去を想う者、今まで十分に対比されてきた二人だが、今回で改めて両者のスタァライトへの想いが描かれる。華恋は、英文の“スタァライト”の戯曲本をひかりに訳してもらいながら戯曲スタァライトという作品自体への愛を新たにし、ななは別れが最後に待つ悲劇に対して嫌悪感を表す。しかもどちらも自分自身の経験や性格を投影していて、その果てに華恋は惹かれ、ななは反発しているというのが面白い。

 “絆”というテーマでレヴューが行われるが、これも面白いテーマ設定で、絆という言葉には人と人の結び付きという意味もあるが、転じて人を束縛するものという意味を持つ。ネガにもポジにも捉えられる言葉のチョイスと、華恋とななに対してこの言葉を持ってくるのはすごいなと。

 今回の物語はレヴュー以上に、ななと純那が夜の校舎で話し合うエピローグが印象的だった。

 純那はななが再演してきた“運命の舞台”を咎めたり、否定するのではなく、受け止め、そしてその上でななのことを労う。そこからななに促され、過去の偉人たちの言葉を引用していくところは示唆的だ。偉人たちは過去になったからとて、ただ終わっていくのではなくその思想は今も燦然ときらめき続ける。その言葉は現代の少女の糧となり、今なお新たに言葉が紡がれている。“負けてしまったら終わり”―――華恋とのレヴュー中にそれぐらい思い詰めていた純那がななを救うポジションになることで、この話数が純那のアフターストーリーになっているのも巧みだなと。そしてなな自身も、繰り返しの再演の中で“違うもの”を模索していたことを指摘される。

 最後に純那はボロボロの舞台ノートを指して語りかける。

「あなたが大切にしてきた時間。守ろうとしてくれたもの。全部持っていってあげて。次の舞台に。」

 ななの想い、繰り返してきた時間。全てを許し、救う言葉になっていると思う。作劇的にも上手いのは、なながかなり大仕掛けなことをしてきたけど、悪者にならないように着地させているのがすばらしい。

 最後のやりとりはななのやってきたことに想いを馳せると涙腺が緩みまくるシーンだ。ななは時間を繰り返す度に孤独が増して、その度にきらめきに届かないことを知り、でもループを終わらせることができない。そしていつしか友に敗れ、運命の舞台も断たれ、繰り返した再演は誰にも知られることなく静かに終わる。それでも今までなながやってきたことを純那は肯定し、再び始めるための原動力とすることで物語が結ばれる。ななの果てしないほどの孤独、そしてそこから救われたことを想うと涙が流れる。

 余談だけども、純那が引用した偉人の中にニーチェがいたが、彼は“永劫回帰”という思想を説いた人物だ。永劫回帰をざっくり説明すると「人の生は繰り返し流転するもので、何度も同じ時間、同じ場所で同一の経験をする」という思想。それを肯定できるかというのが議論の骨子となる。もっと砕けた言い方をすると、「起こることは全て決まっていて、新たに生を受けたとしてもそれは変わらない。それでも自らの生を肯定できるか」と言い換えられる。まるで舞台のようだ。終わらない輪舞を演じたななに対して、純那がこの永劫回帰の思想を持ったニーチェを引用し、「過去・現在・未来」のことを絡めながら、先へ進むことを肯定する言葉を伝えたのが個人的にはとても印象的だった。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第8話「ひかり、さす方へ」

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あらすじ

 ひかりがイギリスの王立演劇学院にいた頃。今以上に情熱を持って舞台に取り組んでいた。それも全てはキリンのオーディションを経て一変する。惜しくも2位となったひかりは自分のきらめきが奪われたことを悟る。失ったきらめきについてキリンを問い詰めるひかり。トップスタァの誕生のためには多くのきらめきが必要という。ひかりに少しだけ残ったきらめきを見て、キリンは日本でのオーディションへの参加を提案。華恋との約束を果たすためにひかりは日本でのオーディションに臨むことに―――。

 

 

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感想

 ひかりのオリジンと再生産が描かれた話数だった。見所は今回の主役であるひかりを演じる三森すずこさんの演技。イギリスにいた頃のひかりやきらめきを失ったひかり、また幼少期のひかりと様々な声色を駆使したキャラクターの変化を楽しめた。また作画も、ひかりもそんな表情をするのか、という驚きがあった。ゆえにきらめきが奪われる展開が待っていると思うと切ない気持ちになる。

 印象的だったのはひかりがモノローグで自身が舞台少女となった瞬間を語る場面だ。ひかりが華恋と一緒に舞台を観た理由が“他の子が知らない世界を知っている”という自慢のつもりだったというのが素朴かつ共感できるものだった。そこから華恋から予期せぬ返答があり、共にスタァになる約束を交わしたことで舞台少女として生まれ変わったというのが面白い。このときのひかりは鑑賞者としての自分を華恋に知ってもらおうと考えたが、華恋はひかりの思惑とはべつに、舞台を観る側ではなく立つ側になろうと子どもなりに見据える。ひかりがトップスタァを目指すそもそものきっかけは華恋がかけてくれた言葉―――のちに王立演劇学院に通う才女が、ただ一人の女の子が交わしてきた約束で自らの夢を定めるという展開に胸が熱くなった。おそらく、このときのひかりは自分がプレイヤーになるという意識はなかったように思う。そこから舞台に感銘を受けた者のおかげで夢を自覚するというのは、他者との関係性で物語を紡いできた本作らしい落とし込み方だ。

 今回は孤独のレヴュー。自分自身だけにしかわからない苦悩を抱えるひかりとななが剣を交える。どちらもキャラ性が“オーディション”と強く結びついてる二人。再オーディションやループの設定が物語の根幹と関わりがあるという風に描くのではなく、ひかりとななの個性やバックボーンの強化に使われているのが面白い。世界観や設定以上にキャラを注力して描いているのが改めてわかった。勝者はきらめきを再生産したひかり。雄々しく独り“ポジションゼロ”を宣言するが、最後にはステージ上にもう一人の姿はあるのか。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第7話「大場なな」

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あらすじ

 2018年3月3日―――第99回聖翔祭。99期生による「スタァライト」開演。成功のうちに幕を閉じる。

 2018年3月5日―――舞台の打ち上げ。永遠の仲間と運命の舞台を見つけ、舞台少女"大場なな"が誕生。

 2018年5月25日―――ななはオーディションでトップスタァに。自らが望む運命の舞台を叶える。

 2017年4月17日―――再び第99回聖翔祭「スタァライト」を開演するために終わらない一年が始まる。

 

 

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感想

 話数としても折り返し地点、ここでようやくいろいろなものを匂わせていたななのメイン回。謎がいくつか明らかになったが、やはり一番の衝撃はななが何度もトップスタァになり、その度に一年前に戻っていたという事実。99期生のみんなを守るための彼女なりのやり方ではあるようだが、彼女の誰かが欠けていくことや離れていくことへの恐れはどこから来るのか。それを考えると、家族がいないもしくは自らの家庭環境を嫌悪しているかのどちらかなのではと思う。ループを繰り返したななの眼差しは99期生を包み込むようで、その優しさを表すかのようにメインキャラ以外の同級生のデザインが並ぶカットは圧巻だった。

 繋がりを手放さない、そういう意味ではななもまた他者ときらめこうとしていることがわかるが、望みのスケールが他の舞台少女と違うのと、99期生全員を巻き込むという点ではその強さも桁違いだ。しかし何度もトップスタァになり、望みの舞台を何度も再演するが、初めての「スタァライト」のときのきらめきには届いていないというのも切ない。本当はもう届かないということに気づいているのかもしれない。それでも時間を前に進ませたくない、みんなを離したくない、そんなジレンマを感じる。まだ気づいてないとしても、日々進化する華恋、それに感化された舞台少女によっていずれはななの時が動き始めるのかもしれない。

 ループの最中、突如現れたひかりやそれによってオーディションに参加することになった華恋、その他にもイレギュラーな要素が多く"台本"がおかしくなっていることを良く思っていないななだが、転入生であるひかりに積極的に絡みにいったりと、この状況すら楽しもうとするのは舞台少女としての潜在的な素質の高さを感じさせる。しかしこれはなな自身が変化を求めているとも言えるのではと思う。ひかりとの絡みは自らの舞台に引き込むのが目的ではあるけど、そのためには筋書きをリライトしなければならない。ずっと同じ日々を送るはずが一人増えると前とは別物になる。思えば、ループの最中に華恋が発するはずだった言葉をななが先回りして話す展開があるが、あの"アドリブ"もななの変化を求め、きらめきへと向かおうとする気持ちの発露なのだと思う。こう考えるとななのやりたいことと求める舞台は矛盾した中で成り立っているのがわかる。この終わらない輪を断ち切るのは一体誰なのだろうか。

 余談だが、一番上の画像のカットが今回だと好きなのだが、おもしろいのがループの最中で「スタァライト」の制作途中にもかかわらず、終演後の99期生8人の写真が立ててあることだ。時を戻す際に物を持っていけるのか、単純にループしていることをななの机を映して表しているのか、いずれにせよこれだけでいろいろと想像が膨らむ良いカットだなと。

【アニメ感想】『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第6話「ふたりの花道」

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あらすじ

 レッスンの最中、双葉の成長を目の前で見て焦りを覚える香子。その後、聖翔祭に向けた歌劇「スタァライト」のオーディションでメインキャストから外され、さらに焦りが募る。その夜、双葉がクロディーヌに師事して秘密特訓をしていたことを知る。裏切られたと思い怒りに燃える香子を見て、双葉はクロディーヌの部屋に移ることに。

 キリンのオーディションでトップを取ればと息巻くが思惑は外れ、負け続きの日々。香子は双葉の気を引こうと学校を退学し家元に戻る素振りを見せるが、双葉は止める気配を見せない。新幹線のホームで泣きべそをかく香子を追って双葉がやってくる。言い合いの最中に鳴る着信音―――追ってきた双葉、追われてきた香子、二人のレヴューの幕が開く。

 

 

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感想

 今回は双葉と香子の物語だが、前回を補完するようにまひるとひかりのやり取りがあるのが良い。片付けができないひかりを叱咤するまひる、元々世話焼きな気質であることがわかる。華恋に対する想いでこじれてしまったが、わだかまりがなくなれば元々の気質が好転するという展開は、根本的な性格は変わらないが良い方向に向かうことはできるという地に足着いた答えで、さらにキャラ性を殺さずに成長が描けていて、短時間の描写ながらも見事だった。

 そして今回は双葉と香子の幼少期から現在までが描かれるのだが、この二人の話を話数の中盤に持ってくるのがまず上手いなと。二人の話が主ではあるが、今までの物語を見てるとより楽しめる作りになっている。追い追われるという関係性は真矢とクロディーヌを、二人の約束という部分では華恋とひかりを、依存的なところは前の華恋とまひるを思わせる。二人の関係が他のキャラ同士のデジャヴで終わるわけではない。追われる側の香子の自覚のなさと、それをわからせるために追い抜こうとする双葉という図式が二人ならではの関係になる。

 あくまで双葉が支え続け憧れたのは、舞台で咲き乱れる花のように舞う香子だ。その位置まで肩を並べるために双葉は鍛錬を欠かさなかったが、いつしか香子は腑抜けてしまった。その姿勢を叩き直すためのレヴューは、追う側が追われる側を目覚めさせるという今までのレヴューとは一味違う図式になった。

 3話で、双葉は自分も「あたしにだってなれるかもしれないんだ」とトップスタァを目指す旨をクロディーヌに話していたが、双葉にとってはスタァになることで香子の相手にふさわしい存在になれることを含んだ発言だったのかもしれないと6話を観て思う。今回は一番近いファンが一番の共演者という関係だった。物語が紐解かれていくとそれぞれが自分のためだけではなく、誰かのために、どんな理由でスタァを目指すのかがわかってくる。同じような構図でも、それぞれのキャラの関わり方で全く違う物語に昇華されていて、9人という大所帯を巧みにまとめ上げていると改めて思う。

 そして次回は満を持して、今のところ深く描かれていないなながメインの回。サブタイトルがキャラ名というインパクトもさることながら、Cパートでの「今回の再演」という表現も気になるところだ。本作は二層展開式を強く押し出しているが、舞台とはまた違う展開になっていくのだろうか(ちなみに舞台版は未見)。

 初登場時の「全部わかってるわ、私はね」というセリフに得体の知れなさを感じたが、その一端が次回でようやくわかりそうだ。