あらすじ
「行ってきます!」―――浦の星女学院をあとにして、ついにAqoursは憧れの場所へ。
東京に到着し、まず向かうは神田明神。決勝のために祈りを捧げる。絵馬を眺めると、浦の星の生徒たちが優勝を祈願したものがいくつもあることに気づく。そして同時に他のスクールアイドルもまた優勝を目指していることを意識する。
そこにSaint Snowの二人が現れる。聖良は、千歌に以前投げかけられた問いを返す―――「勝ちたいですか?」
旅館につき談笑する一行。千歌は「これでいいんだよね。優勝して。浦の星の名前を残して。」とつぶやく。みんなが沈黙する中、曜が押入れから枕を取り出し投げつけ、そこから全員を巻き込んでの枕投げに発展する。
2年生だけで会話する中で千歌は「行きたかった?音ノ木坂」と梨子に聞く。梨子は「少しだけ」と返す。すると千歌は、明日は現地集合にして、行く場所はみんなの自由にしようと提案する。
千歌はメンバーそれぞれに「勝ちたい?」と問う。答えはそれぞれだが「勝ちたい」気持ちは一緒。
決勝当日、千歌は秋葉原の地に降りる。すると曜もやってくる―――ここがAqoursにとっての始まり場所。
曜が手に持ったチラシが風にさらわれる。追いかけるうちにUTXのモニター前まで来ていた。千歌は曜に問う―――「勝ちたい?」
「もちろん。やっと一緒にできたことだもん…だから、いつもの千歌ちゃんでいいんだよ。未来のことに臆病にならなくていいんだよ。」
梨子もやってくる。「ピアノは弾けた?」と曜。晴れやかに「もちろん!」と応じる。千歌は梨子にも同じ問いを投げかける。
「勝ちたい!この道が間違いじゃなかったって証明したい!精一杯、心から、スクールアイドルをやりたい!」と三人で抱き合いながら梨子は叫ぶ。
曜と梨子も問う―――「千歌ちゃんは、勝ちたい?」
"0"が記された紙を掲げる千歌。「0を1にして。そのままでいいんだよね。普通で。怪獣で。それで今があるんだよね。私も全力で勝ちたい!勝って"輝き"を見つけてみせる!」
千歌は風にさらわれる紙を見送りながら「ありがとう」とつぶやく。
アキバドームへと向かうAqours。だんだんとメンバーが集まる。歩道橋を駆け上がり青空の下で、千歌・曜・梨子・花丸・ルビィ・善子・ダイヤ・果南・鞠莉は円陣を組む。
「0から1へ!1から、その先へ!」
感想
1期のときから目指し続けたラブライブ!の決勝。Aqoursはその夢の舞台についに立ちました。決勝大会の場面は曲を歌うところ以外ほぼなく、千歌たち9人の話が丁寧に掘り下げられていました。
他のスクールアイドルもまた優勝を目指しているのを意識するシーン、そこから聖良の問いへと繋がりますが、ぶっちぎりで優勝すると誓った千歌の覚悟を試すかのようでした。
そこで立ち止まってしまう臆病さ、言い換えれば他人のことを考えてしまうやさしさが千歌らしいです。そして千歌は「勝ちたい?」という問いをAqoursのみんなに投げかけますが、ここがμ'sとの対比にもなっています。無印2期12話の決勝では、穂乃果はμ'sのメンバーに「本当になんて言ったらいいかわからないや。だってもう全部伝わってる」とあえて言葉では語りませんでした。対して千歌はあえて問いかけます。それはみんなの口から「勝ちたい」と聞きたかった、つまりそれぞれの意志で「やりたい」と聞きたかったのだと思います。この姿勢が"高海千歌"という人物を最高に表しているなと思っていて、みんなの意志を尊重し、みんなで進もうとする気遣いを持つのが千歌の資質だなと改めて感じました。決勝当日にそれぞれの自由時間を設けたりしたのもその現れかなと。
千歌の問いにみんな「勝ちたい」と答えますが、そこに個性やヒストリーが絡んできて最後の大一番なことをひしひしと感じました。音ノ木坂の教室で梨子が弾く「想いよひとつになれ」のピアノアレンジがこの一連のシーンで流れるのも素晴らしいです。そして決勝での新曲「WATER BLUE NEW WORLD」の作曲が「想いよひとつになれ」の佐伯高志さんというのもある種の運命を感じます。
問いに率直に答える1年生に対して、3年生は立場などから少し捻った答え方をしていてこの差異が面白かったです。
千歌と曜は秋葉原に降ります。それは始まりの地だからというのもありますが、曜にとっては千歌が見た景色だからというのも大きいのかなと思います。そこで曜は問いの先にある千歌の不安を拭うように「いつもの千歌ちゃんでいいんだよ」と言います。曜にとっては共に活動してること自体が夢だからこそ、千歌にもその先にある"優勝"を肯定してほしかったのだと思います。何も間違ってないと背中を押すようでした。
梨子は「この道が間違ってなかったって証明したい!スクールアイドルをやりたい!」と答えますが、それぞれの回答の中で一番涙腺に来ました。一度は自分のやってきたことを否定しそうになったけど、これまで一つひとつ積み重ねてきて梨子は変わりました。彼女にとってこの大一番が人生まるごと肯定するための戦いなのだと思うと涙が止まりませんでした。そしてそれはおそらくメンバー全員に共通していて、紆余曲折あったAqours全体にも想いを馳せてしまう素敵なセリフでした。また、スクールアイドルを心からやりたいと、梨子にとってピアノと同じレベルの大切なものになったことが改めてわかったのも嬉しかったです。
全員の答えを聞いたあとに千歌も「勝ちたい!」と宣言します。1期12話のときは「そう思えない」と言っていましたが、経験を積んだ千歌たちは勝ちに行くことを選びました。他の人たちの夢を壊す"怪獣"になったとしても、浦の星女学院のために、何より自分自身のために目を見開いて覚悟を決める千歌がいつになくかっこよかったです。Aqours、そしてAqoursに関わる全ての人の想いが一つに重なる瞬間でした。
1期12話の善子のセリフで「自由に走ったらバラバラになっちゃわない?」というセリフがありましたが、自由に行動した結果、しっかりとAqoursは集まってきます。
学年毎に合流し、全員が出会います。3年生の会話の中で、「ずっと一緒にいられますように」という願いが叶っているとダイヤが言い、「バラバラになっちゃうのに」と果南は離れる寂しさを吐露します。ここで鞠莉が「一緒だよ!だってこの空は繋がってるよ。どんなに遠くても、ずっと、いつでも!」と言うのですが、一度は不本意な別れを経験したからこそのセリフだなと。ダイヤが「姿は見えなくても」と同調するのも良いです。そう、別れるといっても2年前と違って、今回は心がすれ違っていません。
1年生の会話、善子が統廃合を迎えても一緒にいるよう契約を持ちかけ、花丸とルビィがセリフを奪うように約束します。花丸とルビィが善子に向かって感謝の気持ちを伝えますが、1期13話の大会前に善子が二人に「ありがとう」と伝えたのと対比になっていて良かったです。
全力で「勝ちたい!」という気持ちになれた2年生は、全員が集まる前からワクワクしています。不安な気持ちもあるでしょうけど、起こることを全て楽しむと決めたからこそこの気持ちになれたのだと思います。
Aqoursが全員集合したあとに青空の下で円陣を組むのが良くて、Aqoursの色が広がる空の下というシチュエーションは最高でした。
0を1にして、また0に戻ってしまうこともあったけど、それでも積み重ねてきたものは消えない―――そのことを自覚してさらに"その先"へと向かうAqours。最高のラブライブ!決勝でした。
楽曲紹介
「WATER BLUE NEW WORLD」
作詞:畑亜貴
作曲・編曲:佐伯高志
ストリングスアレンジ:倉内達也
歌唱:Aqours
ラブライブ!決勝の楽曲。「想いよひとつになれ」「コワレヤスキ」とAqoursではシリアスでメロディアスな曲を手がけることの多い佐伯高志さんの作曲。ストリングスアレンジに「SUNNY DAY SONG」の倉内達也さん。イントロのギターが流れたときには今までのAqoursとも違う曲なのにその音色に懐かしさを感じました。またCGゆえにできるダイナミックなカメラワークにも食らいました。そして作画とCGとの違和感がなくて、初見ではどっちかわからないカットも多かったです。
Aqoursのヒストリーを想うと涙を抑えられない歌詞で、過去のこと、未来のこと、そしてAqoursにとっての"今"が歌われています。歌い出しが鞠莉という時点でかなり食らいました。
「動け 動けば変わるんだと知ったよ」という歌詞がありますが、今では「決めたよHand in Hand」のときのように「かわれかわれって今日から新しい世界へと」と、何かに願うだけの存在じゃないことがしっかり示されていたのが印象的でした。
サビ前からサビの展開が特に好きで、Aqoursのカラーである水色の羽が舞い散る映像はすばらしかったです。会場からモニターで見る人に向かって羽が届く様がシームレスでめちゃくちゃきれいでした。
サビで転調したあとに、メンバーそれぞれがウィンクするカットを挟み、Vの字に並び、同じ方向に向けて空を指差します。彼女らの集大成を感じてただただ感涙しました。そして最後に、同じ方向に向けていた指をそれぞれ別の方向にずらしますが、「夢が見たい想いは いつでも僕たちを 繋いでくれるから 笑っていこう」と歌ったあとなので、別れ以上に繋がりを感じました。
やり切ったあとに静かに目を閉じる千歌。最終話はどのような景色が広がっているのか、楽しみです。
リリーのサブミッションホールド "サイレントチェリーブロッサムナイトメア"…完全に極まってます。