マミヤの忘備録

映像作品、ラップ、その他諸々について記したいなぁと思ってます。

【感想】ガールズバンドクライ 第13話「ロックンロールは鳴り止まないっ」

いよいよ、最終回。

展開の凝縮っぷりに驚きつつ、カーテンコールまでの流れが見事。

いつも通り、ごゆるりと感想にお付き合いください。

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高校の教室で仁菜とヒナが問答を交わす。いじめを見過ごせない仁菜が同級生を助け出そうと動くが、ヒナにたしなめられる。「間違っとう方が正しかって、やっぱ変とよ」義憤に駆られ仁菜が教室を出る——昔の夢を見て目が覚め、うなだれながら事務所に向かう。仁菜の正義感と正しさへの執着は昔から変わらない。結果、それが親友との別離に繋がった。

事務所で三浦から、認知度は上がっているのに想定を下回る再生回数なことを告げられるトゲトゲ。矢継ぎ早に宣伝側の責任と謝罪する三浦、桃香が曲の問題であることを認める間すら与えないほど理路整然と話をまとめる。

三浦のプロフェッショナルな態度にリスペクトしてしまう。メジャーバンドとしては駆け出しで満を持してのシングル、精神的な負担をかけない配慮はさすがマネージャー。その配慮に気づく仁菜以外の4人、仁菜はそもそも曲に問題があるとは絶対に認めないのがブレない。

部屋で一人、トゲトゲについてエゴサしてネガティブなコメントにキレまくる仁菜。SNSを弄っているとダイダスのヒナからフォロー申請が来ていることに気づく。迷いながら承認すると、ヒナからカフェに誘われる。"三浦からダイダスの事務所に、両日両バンドが出演する形式の対バンへの変更を請う連絡があった"ことを仁菜に伝えるヒナ。間違ってたことを認めれば助けてあげると仁菜を煽るが、当然のように反発し仁菜はその場を去る。

ヒナの仁菜に対する焚き付け方が露骨すぎて、めちゃくちゃ歪んだ友情がここにあった。「全部さらけ出して生きてやるんでしょ?」と仁菜を挑発するけど、新川崎(仮)のときの仁菜のMCを引用するあたり、仁菜たちが話題になり始めた頃から気にかけていたことが伺える。敵に塩を送る方法がひん曲がってるけど効果的で、仁菜のことを熟知したヒナの性格の悪さが光る。それに比例して仁菜への友情もまた厚く感じた。

トゲトゲのメンバーに呼び出され桃香の部屋に行く仁菜。"ダイダス側から同じライブに両日出演の打診があった"と三浦から連絡があったことを伝えられる。仁菜はそれを断固として拒否する。そしてヒナとのやりとりをメンバーに伝え、「だって私、間違ってないから!」とコタツの上に立ち桃香エレキギターをかき鳴らす。

悔しさ・怒りを声とギターに乗せる仁菜――それを見つめる各メンバーが抜かれるシーンで、桃香だけが仁菜のその姿に目を見張る。「あのときの私を否定しないでください」と"桃香の歌"が叫び散らかす姿を見てロックを感じちゃうところに、仁菜と桃香の一蓮托生な関係性が色濃く出ていて好きだった。お互いがお互いのロックを呼び覚ますからこそ、バンドじゃなければならない。

無力感を突きつけられながらAパートは終了。

Bパート始まりは近所の神社。仁菜がいじめられた経緯、ヒナとの絶交が語られた。助けたはずの子がいじめグループの一員になっていじめてくる、そういった部分もわかっててヒナは仁菜に忠告していたように思う。

「ヒナっていう子の方が正しいわよ」と述べる智。同時に「でも、だから私は惹かれたんだと思う。あんたの歌声が好き。たぶんルパも、桃香も、すばるも」と意固地な仁菜のあり方をボーカルの資質と合わせて肯定する。メンバー全員の決心が固まっていく。

智のこのシーンでのセリフが象徴的で、仁菜は"正しくない"けど、同時に”間違ってない”という仁菜のあり方が端的に示されたシーンだった。それを浮き彫りにするのが、仁菜と似た者同士な智というのが上手い。智の方は9話で自分が"正しくない"自覚はありつつも、仁菜のひたむきさを見てあらためて"自分は間違ってない"という想いを持てた。だからこそ自分が"正しくない"ことを自覚せず、ずっと"間違ってない"ことにこだわる仁菜が時に痛々しいけどまぶしく見えて、智もその想いに心が動かされたのだと思う。苦言を呈しながら本音を話す智だけじゃなく、他のメンバーもまた仁菜に心動かされトゲトゲに本気で賭けている。

逆に仁菜のアンビバレンツなあり方が原因で離別したのがヒナで「正義の棘出して、繊細振りかざして、みんなを傷つけて。なんか、自分が悪者に見えてくる」と過去でも言われたように、仁菜のあり方が"間違っていないか"という部分をいろんな面から揺さぶってくる演出が要所で出てくる。三浦に決意を伝える次のシーンでもそうだ。

ツーマンライブでの対バンの打診を断るトゲトゲ、集客や売上が大幅減になる選択なのは理解している。その分の責任を取るために"退所届"を三浦に提出する。三浦が理由を問いただすと、仁菜がヒナから連絡があったことを伝える。三浦の尽力があるのはわかっているものの、ダイダスに頭を下げる形のツーマンを受け入れられず詫びる。三浦はそれを受け止め「そんなあなたたちだから一緒にやりたかった」と最後の協力を申し出る。

このシーンでも仁菜の"正しくなさ"が色濃く発揮されている。プロとしての職業倫理という意味では確実に誤った選択なのだけど、それを受け入れると間違ってたことを認めてしまうことになるからこそ、仁菜たちはわがままを通すしかない。トゲトゲによるわがままで事務所が被る損失——つまり "間違ってない"ことを貫く代償、それを仁菜たちで背負う決意は、世間とはズレてても彼女らなりの倫理が感じられた。そしてそのスタンスに動かされる三浦、個人的には一番この話の中で腹括ったロックな人物だった。「お金と契約のことは事務所と三浦がなんとかします」ではすまないレベルだろうけど、裏で矢面に立つことを覚悟してるであろう三浦がかっこよすぎた。

エンジニアの中田にも退所を報告するトゲトゲ。「10年経って生き残ってたらまたおいで。タダで仕事してあげる」と中田から言葉をかけられる。『運命の華』が完成した際に自分の信条を曲げて、評価してくれたことを思うと中田もまた、それなりにトゲトゲに賭けてたのかなと。

行き慣れた吉野家、「この5人でずっとやっていく。絶対にやめない」——仁菜たちは紅生姜で誓いを立てる。ここで仲間と出会えたからこそ、この街が好きだと桃香に伝える仁菜が良い。川崎にルーツを持たない5人が導かれるように集まって、絆を結んだ。あなたと出会えた場所だから、あなたがいる場所だから、その街が好きになる、というのがストレートでシンプルで胸に込み上げるものがあった。

迎えるライブ当日、奇跡は起こらずまばらな集客で、ライブ前からトゲトゲは大敗を喫する。メンバーは楽屋で談笑。各々のルーツや変遷が詰まった衣装を着ていて感慨深い。旧ダイダス時代はメジャーでのしがらみから抜けるために一人脱退した桃香がメジャー時代の衣装を纏っているのが印象的。今度は一人で舞台を降りるんじゃなく、5人での門出。それぞれが歩んできた過去を、それぞれが肯定した瞬間がさりげなく描かれた。

楽屋でポジティブな反応を示すリスナーがいることがわかり「本気って伝わるんですね、桃香さん」と嬉しさをにじませる仁菜。そこから話題が仁菜のギターの腕前に移る。本気で打ち込んでるからこそ、絶望的な状況に陥ってもギターの練習は欠かさなかった。ギターボーカルとしての仁菜の門出だ。

仁菜の"未成熟"な部分はたくさん描かれてきたけど、"成長"していないわけではない。仁菜の中で変えたくないこと、変えたいこと様々あると思うけど、それも全て"間違ってない"と思いたいから。無理やりに自分の想いを通すだけじゃなく、その想いを通す力をつけるための努力はする。そういう実直さが傍若無人なだけではない仁菜の魅力だ。

ライブ直前、ヒナがバックヤードに残したいたずらに仁菜が憤慨する。その様を見て、すばるは「案外、ヒナって子はニーナに折れてほしくないのかもしれないね」と核心を突く言葉をかけ、それに他のメンバーも同調する。このとき物語の主人公なのに、おどけながらとはいえラスボス扱いされているのが、仁菜のアンビバレンツな存在感を表していた。

そして始まるライブ――まばらに集まったオーディエンスへの挨拶はほどほどにMCへ。 二階席にいるヒナの姿に気づき眉間に力が入る。過去のいじめについて自分語りを始める仁菜。いじめられている同級生を助けに颯爽と歩く廊下――「教室から助けに向かう途中、嬉しかった。なんか誇らしかったし、そんな私が好きでした」と思い返す。結果的に自分がいじめられることになったけど、「何一つ後悔してません」と語り、在りし日にダイダスの歌をヒナと聴いて語り合ったことを思い出す。

形は違えどダイヤモンドダストの――桃香の歌で強くなれたのは仁菜だけじゃなく、ヒナもそうだった。ヒナが芸能の道を志した経緯は語られてはないが、間違いなく桃香の歌に背中を押されたことがわかった。絶交して遠い日の出来事になっても、あの日のロックが今も変わらず二人の中に響き続けている。

今回、仁菜の変わらない"初期衝動"がヒナの挑発だったり、三浦のサポートだったり、メンバー以外の周囲の人すら動かすきっかけになってるのが個人的にはロックだった。

負け戦なことがわかっててもトゲナシトゲアリのために来てくれた"へそ曲がりな人たち"に仁菜が感謝する。負けてないことの、間違ってないことの証明のために「私たちの始まりの目撃者になってください!」と高らかに声を上げる。

始まった曲は『運命の華』。正直、今までのハードな曲とは違って爽やかなテンションに面食らった。ソリッドな音作りとは違う、手拍子を誘うリズム、軽やかなピアノ、泣きのギターが往年の邦ロックのサウンドを彷彿とさせる。それでも、桃香の歌詞と仁菜の前のめりな歌声が合わさるとトゲナシトゲアリの曲になるのが面白い。仮の歌詞はそのまま採用、バンドをする喜びに溢れているムードなのが微笑ましい。

物語の演出としても、過去から繋がって今を肯定するようなポジティブな絵作りが成されてて、キャッチコピーの"怒りも喜びも哀しさも全部ぶちこめ"を『空白とカタルシス』とは別の形で表現したものになっていた。いろんな感情が渦巻いたあの日がどんなに遠くなっても、どこまでも近くにあって、仁菜、桃香、すばる、智、ルパの内で響き続けている。

あえてメジャーデビュー曲、それも大コケした曲を演奏するというのも、自分たちが作った曲への自信と、つまづきすら肯定する姿勢が見えてかっこいい。

『運命の華』は劇中のリスナーには受けなかった。その理由は曲調の変化もあるかもしれないが、もしかしたら"トゲナシトゲアリの物語"がまだ浸透していないからなのかもしれない。仁菜たちのモチベーションや目標がリスナーに浸透することでこの曲の――ひいてはバンド自体の世間的な評価がひっくり返る可能性もある。そう、『ガールズバンドクライ』をテレビで視聴している現実の"私"が、仁菜たちの物語を知り、トゲナシトゲアリの曲に食らったように。

ライブ後のカーテンコールで明るいテンションのトゲナシトゲアリ、自分たちの前途を照らすようだった。やっぱ笑顔で見送れるのって良い。タイトルバックからEDに繋がり、その映像が本編後の物語になってる仕掛けにも食らった。

全体を通して振り返ると、物語のテンションとしては11話がクライマックスになるような流れだったけど、プロになって事務所を辞めるまでは描きたかったのだと思う。絶頂まで行ったとこで幕引きではなく、1クール分の物語のエピローグとして"正しくない"けど"間違ってない"仁菜の挫折と再起を描くところに、物語とキャラに対するスタッフ陣の誠実さを感じた。ここから先があるとすれば、数字や市場という音楽ビジネスの絶対的な原理との戦いになるだろう。今回はビジネス的には厳しい結果になったが、"負けてない"とステージに立ち続ける限り、"間違ってない"と叫び続ける限り、トゲナシトゲアリは負けない。

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まさか興業的に全負けする展開になるとはってのが正直なところ。同時に間違ってないことを証明するための物語、そのプロローグに立ち会っている高揚感もあった。

仁菜の上京を物語のスタートラインにして、物語のテーマから飛躍することなく地に足ついた展開を描いた結果、CLUB CITTA'のあのライブを結末にしたのは大胆だけど、納得がいった。要所で急展開の驚きはあったけど、筋が通っているところに花田十輝の凄みを感じる。

いじめられている子を助けようと向かう仁菜のカットがヒーローみたいですごい好き。その後、仁菜自身が不幸に見舞われたとしても後悔せず今の自分を誇る姿がまぶしかった。ニチアサだったり、多くのヒーローを擁する東映の制作でヒロイックなカットが観れたのが嬉しかった。

今回は11話のすばるの「だからさ、続けようよこのバンド。もし今日がダメでも」というセリフを思い出してしまう展開で、上手くいかなくてもやり続ける姿が描かれた。それはたぶんなんにでも言えることだし、ガルクラを観た人へのエールなんだろうって受け取ってる。

久しぶりの酒井和男が監督、花田十輝が脚本の新作。一年前の発表時は『ラブライブ!サンシャイン!!』とは違う作品なんだって気にしないようにしてたけど、放映日が近づくにつれてそわそわと期待値が上がってきたことを1話の感想記事の最初の方に書いた。

見終えて思うことは追ってよかったなってこと、このアニメを好きになったのは間違ってなかったってこと。この3か月、本当に本当に楽しかった。これからのリアルのトゲナシトゲアリの活動も楽しみ!

さすがに長くなったので最後に…

TVアニメ『ガールズバンドクライ』の制作に携わった全てのスタッフ・キャストのみなさん、本当にありがとうございました!

そして、ここまで感想記事を読んでくださったあなたにも、万感の感謝を!


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【感想】ガールズバンドクライ 第12話「空がまた暗くなる」

ガルクラも終盤だし週初めに更新するぞ〜って思ってたけど、そういうときに限ってバタバタ立て込んでしまってままならない。

望むようにいかないのもまた人生か。

ということで12話感想、ゆるりとどうぞ。

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宣材写真を撮るシーン、無事にフェスでのライブが認められてプロ契約にまで漕ぎつけたトゲナシトゲアリ。衣装を着て各々ポージングする中、仁菜のカットがどれも慣れてない感いっぱいでかわいい。

契約当日、智とルパは吉野家の最後のシフトのため欠席。契約後のマネージャーはそのまま三浦が務める。本当はテンションの振れ幅が広いはずの三浦だけど、仕事となると私情を全面には出さないあたりがプロフェッショナル。バンドとは違う形でプロの仕事をその姿勢で見せている。

契約の下りから、"音楽だけで生活する"っていうミュージシャンとしてのステージが変わる様をじわじわと表現していくのが面白い。

仁菜、桃香、すばるの3人で楽器店に立ち寄る。契約書に書かれた給料は20万円、高校生の時分であれば破格のお金に驚く仁菜。

同時にその給料は今後の期待を込めたものでもある。そのことを理解しているからこそ、フェスでダイダスよりも話題が広まらなかったことに仁菜の自信が少し揺らぐ。

数字を気にする段階にシフトしたか…ってのが率直なところ。今回の物語は数字という絶対的なものにまつわる話でもあった。数字や評判を求める現状とのギャップを示すように、7万円台のギターを物欲しそうに眺める仁菜を要所で挟むのが印象的だった。

智とルパのバイト卒業を祝いに吉野家へ。小さな花束とメッセージカードを用意して手渡すすばるがあまりにも気配り上手。

桃香の部屋でプロ契約記念の鍋パーティー。野菜の茹で加減ですら言い合いになっているが、思えば些細なことでもやり合ってるなって微笑ましい気持ちになると同時に、些細なことでも本音で話すっていう本人たちの流儀を感じる。

そのわちゃわちゃした様を見て、ヒントを得た桃香が楽曲のネタをスマホにメモしていく——。

プロとしてのレコーディング初日、エンジニアの中田をはじめ、他スタッフとの顔合わせの後、鍋パーティーで思いついた曲を題材に制作がスタートしていく。

ダイジェストを交えつつ制作シーン。メンバー5人での制作を純粋に楽しむ仁菜、そこからだんだんと不安な色を帯びるのが生業としての音楽にステージが移行したことを表していて面白い。

制作と平行してダイヤモンドダストから対バンのオファーが舞い込む。受けて立とうとする仁菜だが、集客や知名度などが物を言う数字ありきの出来レースだと諭される。

12話の序盤からだけど仁菜がいつもに比べると大人しめで、何がなんでも突き進むっていう勢いがだんだんとなくなってくる。ここからは自分たちの動き一つでトゲトゲの立ち位置が決まるっていう恐れもあったのかもしれない。「プロってこういうのがずっと続くのかなぁって」——制作が始まった当初の楽しさはかげり、仁菜は現実と理想の差を思い知る。

それでも、焦燥感で制作に行き詰まる桃香を鼓舞するようにダイダスとの対バンを受けることを仁菜は提案する。「どんな理由があってもトゲトゲは歌う場所から逃げちゃダメだと思うんです」――勝ち負け以前にライブできる場所があるならやる。打算を知らないからこその言葉だけど、論理で押し切るわけではなく最終判断は桃香に委ねた。

トゲトゲの5人で神社にお参り。また昔みたく失ってしまうんじゃないかと不安がる桃香を見透かす仁菜、桃香の恐れを優しく受け止める。

今回の話、論理で押し切るんじゃなく引く姿勢を見せたり、勢いで鼓舞するだけじゃなく不安に寄り添おうとしたり、仁菜の成熟した部分が表現されている。それとともにその仁菜の態度自体が仁菜自身の不安や恐れの裏返しにもなっていて、成熟することの代償を感じた。

賢明になるほど怖気づくし、飛び込むための根拠が欲しくなる。だから数字や評価を求める。思い通りにいかない現状が仁菜の勢いを滞らせるが、それでも逃げる選択肢を取れないのが仁菜という人間でもある。8話で桃香の退路を断ったように仁菜自身ももう逃げ場はないし、"あの日の仁菜"が今もまだ仁菜自身をずっと見張っているのだと思う。自分が発した言葉やムーブが自分自身に返ってくるって話の流れがとても上手かった。

桃香がダイダスとの対バンイベントの出演を決意し、新曲もようやく完成。普段は曲の好みを口にしないエンジニアの中田が「今の形が僕は好きだな」と評価してくれたり、三浦が帰り際に「三浦も好きです。この曲が売れると信じています」と私情を口にしたり、トゲトゲへ期待がかけられる。でも。物語のテンションとしては上がりきってないのが不穏な予感を増幅させる。

新曲『運命の華』の配信当日、朝早くに起床し身支度を整えて、ロックの神様に拝む仁菜。サブスクアプリを開き再生回数を確認する。

”103”――スマホの画面に映された数字。

「なんだ、これ」と行き場のない絶望が口をつく。

努力が報われるとは限らないってのは散々描いてきたけど、それに加えて周囲に評価されたからといってマスに届くかはわからない難しさが描かれた。数字や市場といった音楽界を支える絶対的な原理がこの終盤で壁として現れてくるとこは、トゲトゲがプロになったからこそ描ける要素だなと。

「私、トゲナシトゲアリの物語を作りたいんです」と仁菜は言ったが、まだその物語が大勢の人には浸透していない。トゲトゲに触れて個性や強みがわかればこそ中田のように評価してくれる人も増えるかもしれないが、そもそも触れて欲しい人たちに届いていない。音楽以外の娯楽も無数に溢れる世の中、音楽市場において新人バンドに耳を傾けてもらう難しさにはリアリティがあった。

数字に固執していく中でダイダスとはまた違う、仁菜が立ち向かわなければいけない対象――絶対的な原理があらわになってきてるように思う。それをさらに数字で超えていくのか、それに対して数字とは違った形で勝負をするのか、正直どのルートも想像できる余地があるからこそ予想できない。逆に言えば、12話の幕引きの仕方が上手かったとも言える。なんだかんだ今までネガな展開で次回への引きになっても、ライブシーンなどで観る側の気持ちを整えてた部分があったから、ここまで仁菜を突き放して引きにするのは大胆。真っ白な状態で最終話に繋げられて、気持ちがすごい引っ張られてる。

「ロックの神様っていると思うんですよね」——12話の結末を思うと皮肉な部分もあるけど、ここから仁菜がロックの神様を信じないニヒリストになるのか、それでも奇跡を感じてロックに殉じるのか、個人的には後者になりそうな予感を抱く。

自分の観たい結末が観られたらそりゃ嬉しいけど、それ以上に追ってきて良かったなって思いたい。

このアニメを好きで良かったって、間違ってなかったんだって思いたい。

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ガルクラの円盤発売の前週に今回の話が展開されて、ある種のドキュメンタリー性を帯びてるとこが面白かった。花田十輝の12話放映前のツイートもそれに拍車をかけてて、狙ってやってるのかわからんが上手い。

ラブライブ!サンシャイン!!』のときは1期2期ともに主人公が挫折する展開は中盤で描かれたけど、ガルクラはここにきてってタイミング。そりゃプロになるならモチベーションだけじゃどうにもならんよなぁ。それでも三浦や中田、トゲトゲのために尽力した人たちも含めて、みんな報われてほしい…。

次回の引きに真っ白になってたけど次回予告で手を叩いて上がっちゃった。サブタイトルで明るい気持ちになれた。

最終話は神聖かまってちゃんの『ロックンロールは鳴り止まないっ』。

ずっと仁菜たちのロックが響き続けることを信じつつ…

『ガールズバンドクライ』最終話もめちゃくちゃ楽しみ!!!!!

 

余談だけど、かまってちゃんだと『天文学的なその数から』が好き。


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【感想】ガールズバンドクライ 第11話「世界のまん中」

「私は噓つきじゃない」あたりからぽろぽろ泣いてた。

それぞれのモチベーションの描き方も映像も言い尽くせないほどすごい。言い尽くせないけどどう思ったか残したいので以下感想。

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アバン、大観衆を前にステージ上で晴れやかな表情の仁菜。今回のフェスのライブシーンまでやり切ってくれるんだなって期待感が煽られる――。

スタジオ練習の終了後。フェスを辞退した別バンドの枠に、トゲトゲの出順変更を提案されていることをメンバーに伝える桃香。注目度の高い時間帯になり一気に追い風が吹く。

いつもの掛け合いながらもどこかそわそわした雰囲気。その中でも熱を内に秘めて冷静に周りを見る桃香のリーダーシップが頼もしい。

桃香の提案でフェス会場を下見することに。メインステージではないが俄然やる気を見せる仁菜、吉野家とは別に一人でバイトを始めて、始業時間が迫りその場を去る。

ここで一気にすばるに視点が移るのが見事。まさか安和天童との決着も今回でつけちゃうのは欲張りすぎだろ…って唸った。

本当のことをまだ言えてないやるせない表情のすばる、すばるを気遣う智、もう会えない家族を想い涙をこぼすルパ――とシーンが続いていくのが、伝えられる相手がいる者といない者との対比であるのと同時に、伝えられるなら伝えなければってメッセージのようでもあった。

音楽をする理由を問われモノローグでメンバーそれぞれが語る。ルパ(おそらく智も)は「誰かと繋がっていられるから」、すばるは「自分が正直でいられる場所だから」、桃香は「何もかも忘れて自由になれるから」、仁菜は「間違ってないって思いたいから」と答える。ここでAパートは終了。

バイト帰りに暗い自室で佇む仁菜の姿でモノローグが流れるカット、不安と期待を腹に抱えて本番までの数日間を過ごすしているのがわかって、大舞台を前にしても仁菜の素朴さがそこにあった。

このシーンでの問答、『ラブライブ!サンシャイン!!』2期12話で千歌が「勝ちたい?」とAqoursの各メンバーに尋ねるシーンを思い出した。自分たちを証明する物語を書くのが上手すぎるだろ花田十輝…って在りし日を想いつつ、新しい物語を観られる期待感が益々高まっていく。

Bパートの始まりはフェス開始後。トゲトゲにゆかりのある人物が引力に引き寄せられるかのように集う。静かにフェスの実感が高まる。

他のライブを観るために単独行動していたすばる、楽屋に戻り仁菜と語り合う。「メンバー全員の背中見てがんばってます」――昔、すばるがフェスに行ったときに観たバンドのドラマーの言葉に感化されたことが語られた。「あぁ、私だって思ったんだよ」とバンドでの自らの立ち位置を示すように言うのが良い。自分はフロントマンではなく"舞台の主役を支えるポジションだ"ってマニフェストのようだった。

その後に祖母に自分の想いをメールしたことを伝え、「だからさ、続けようよこのバンド。もし今日がダメでも」とバンドへの想いも伝える。

すばるのモチベーションがバンドを続けたいっていうシンプルだけど力強いものなのがはっきりと明示された。当時のダイダスで同じ想いを抱きながら、バンドを続けられなかった桃香が楽屋の外で聞いているのも良い。

「もし今日がダメでも」と付けているけど、戦う前から負けを想定してるセリフじゃなく、フェス以降の先のことも見据える視野の広さがすばるらしい。

仁菜の短所をあげつらったあとに「でも嘘はつかないんだよね、それに全てに全力でそれは安心できる」と信頼できる部分をあげつらう。

仁菜に対してのほっとけないところと憧れてるところが爆発してた。すばるのこの一連のセリフですばると仁菜は対な存在なことが明示されているのが印象的。夕焼けが差し込むテントというロケーションも上手い。

極めつけに"嘘つき"であることを強調するのも示唆的。祖母に「役者以外の夢ができた」旨をメールしたのは事実だろうけど、仁菜に語っていない部分があるだろうなと。そもそもメールで伝えるだけで祖母が納得するわけないのはすばるが一番わかってるだろうし(仁菜が実家に宛てたレターパックとパラレルにした演出でもあるか)。

フェス開始後に他のライブを観に行くと言ってたけど、本当は祖母をフェスに呼んでいてライブ開始までに話を付けたんじゃないかと思う。だからこそ後のライブシーンで安和天童がいた。すばると祖母が直接話をしたことをはっきり示す描写はないし想像でしかないけど、この"空白"こそが物語の強度を上げてくれている。あえて克明に描写しないことで観る側が能動的にキャラを想ってしまうし、断片的に提示された要素がキャラの輪郭を浮かび上がらせる面白さがある。

桃香の提案でメンバー全員で、メインステージに向かう。『ETERNAL FLAME 〜空の箱〜』を出囃子にダイヤモンドダストのライブが始まる。新曲『Circle Of Sorrow』のハードな演奏に驚くトゲトゲ一行。

この一連のシーンで仁菜の回想が挟まる。かつてヒナに「バカじゃねぇの」となじられたことが描かれ、2話での仁菜のセリフを想起させる。自分が間違っているかもと思ったときによぎるのが、かつての友達の言葉だったのかなと。

ヒナはヒナで仁菜に立てられた小指をステージ上で自らも立てて、昔も今もお互いがお互いに強く影響を与える間柄であることが伺える。

トゲトゲの本番前のサウンドチェックはリズム隊をフィーチャーして描かれた。11話のクライマックスに向けたイントロとして最高で、すばるがドラムを叩いている最中に「脚本 花田十輝」って出た瞬間の期待感と緊張感の高まりがすごかった。その後のルパの悪童なベースプレイがトゲトゲの向かう戦いを楽しく彩る。

ライブ直前、円陣を組んで全員で小指を立てる。気に入らないものを拒絶するために立てる中指、その代わりに立てた小指が大一番でトゲナシトゲアリの結束の象徴になるのが感慨深い。

「仁菜の歌を聴かせてくれ、叫んでくれ。私たちの歌でみんなの心を抉ってくれ」と語りかける桃香、やっぱり仁菜を鼓舞するのが上手い。

仁菜以外のメンバーのモチベーションも掘られた流れのあと、迎えるクライマックスでメンバーの想いを支えにして、フロントマンとしてバンドを背負って立つ仁菜に繋げる展開が本当に綺麗だった。

ライブ始めのMCは仁菜メインでやりつつ、舵取りの上手いすばるがコントロール。各メンバー紹介のしんがりで「すばるでーす!」と本当の名前を名乗る。すばるも"すっきり"できたんだなって安堵があった。

曲振りの仁菜のMC。個人的な感情の発露が時として普遍性を帯びる様を見るというか、自分には仁菜みたいな経験はないのだけど共感めいたものが胸の中に渦巻いてて、こいつらに――『ガールズバンドクライ』というアニメに賭けたいって気持ちが最高潮に達した。

始まる仁菜作詞の新曲『空白とカタルシス』――。

「どれだけ手に入れても

 どれだけ自分のものにしてもしてもしても

 追いつけないな」

「この歌を貫いてやります」という口上のあとにこの歌いだしが来るのが、仁菜のハングリーさを表していて気持ちいい。仁菜は怒りを主な原動力にしている部分があったけど、怒りの根本的な原因が解決されてもおそらく満たされないんだろうなって予感がある。怒りが原動力なんじゃなく、わけもなく満たされない渇きこそが仁菜の本当の源泉なのかもしれない。

CGの凄まじさも相まって見入ってたら2番が流れ始めて「これやりきる気なんだな」って、もう感動でボコボコ。観てる人たち全員を信じさせるんだって仁菜たちの気概に応えるような映像のクオリティで、視聴者が没入する説得力のある映像にするんだって制作側のスタンスをひりひりするほど感じるライブシーンだった。間奏でカメラがきりもみ回転しながらステージに落ちて、ギターソロの桃香に迫るところが特に好き。

「怒りも喜びも哀しさも全部ぶちこめ」――ガルクラのこのキャッチコピーを抉るように、メンバーそれぞれのパーソナルな感情が描かれる。描写は断片的ながらもこちらの想像を喚起させるには充分で、『空白とカタルシス』という曲名にふさわしい演出だった。

親類・関係者が次々に抜かれる終盤のシーンで、しんがりとして登場するのが安和天童なのが、トゲトゲの大一番であると同時にすばるとおばあさまの物語の決着にもなってるのがとても良い。多くは語らずこういう部分でも空白を作って、視聴者の想いを強くさせるって手法が酒井和男監督は本当に上手い。

演奏終わりで曲名が出され、このライブやメンバーの回想、その全てをひっくるめてMVとして作品になってる演出に唸らされた。

演奏し切ったトゲナシトゲアリ、歌い切った仁菜――感じた手応えを確かめるように「桃香さん。私、間違ってないですよね」と口にする。桃香じゃなくても万感の想いで頷く瞬間だった。

———

まさかすばるの決着もここでやるのか!ってのは先に書いたとおりで、あーいうしれっと決着をつける洒落た落とし方は主人公以外のキャラだからできるし、そういう意味では特別な演出だなぁと。

ライブ衣装の統一感のなさも印象的で、ルパのミリタリーな装いが好みだった。仁菜の『鬼滅の刃』の炭治郎みたいな耳飾りや『NARUTO』の"暁"のメンバーが着てたような羽織と和モノモチーフな衣装もめちゃ頭に残って好き。あと胸には"仁義"、背には"傍若無人"って盛りすぎで欲張りなのが仁菜らしい。

今回のライブシーン、3DCGの合間に2D作画が挟まれるカットがあったけど、互いの絵面がノイズにならないぐらいマッチしてて、2D的な面白みがある3Dを追求してきた結晶がこのライブシーンだったなと。縦横無尽なカメラの動きやカット割りも間違いなく3DCGがメインだったからこそできたんだろうし、だからこそ生まれた感動だった。

プリキュアだったりで3DCGはよく使ってたし、最近でも『THE FIRST SLAM DUNK』や『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』で日本のアニメーションと3Dの融合・昇華を試みてきた東映アニメーションの一つの到達点だったように思う。クオリティ高い3Dメインの映像をテレビシリーズで毎週観られるのが本当に眼福。

次回はサブタイトルからして不穏な気配。あのライブのあとで「また暗くなっちゃうんかい」ってリアルタイムで観てて吹いてしまった。

【感想】ガールズバンドクライ 第10話「ワンダーフォーゲル」

愛を感じられるか。

仁菜への想いしかない第10話。井芹家の物語のケジメとしてこの上ない。

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ライブ後の物販、グッズは売れないがルパのチェキが好調でなんとか活動費は捻出できている様子。そこに芸能スカウトの三浦が桃香たちのもとに現れる——仁菜と同等の勢いで桃香の音楽に惚れ込み、広めようとする意志を見せる三浦。桃香がダイダスに在籍していたときに「今のままでは通用しない」と言われたことを受け、三浦はフェスで爪痕を残すことを提案する。

そのまま事務所に直接繋ぐ形になるとまたバンド外の横槍が入る。それを考えて現状の数字だけではなく現場の熱量を見せ、やりたいことを通せる形でプロになる道筋を作るってのは理に適ってて面白い。その布石として冒頭で、ネットでの数字はあるのに現場での物販はイマイチなところを見せるのもフックになってる。

そしてフェスに向けての新曲は桃香の希望で仁菜の作詞。「見てみたいんだ。"私の歌"が書いた、私の歌を」仁菜との出会いで感じた音楽の楽しさ、もはやそれを隠さない桃香の態度が気持ちいい。

目下、フェスでの目標は決まったがなかなか歌詞の制作が進まない仁菜。智に対して「言葉ってさ、外にあるんだよ」と諭す。

このセリフ、感覚的にわかる人も多いと思う。思考を巡らせていたときには上手いこと筋が通ってたはずが、いざ形にしてみると何だか違うみたいな(ブログ記事を制作してるとしょっちゅうある)。

バイト先へ仁菜の母親が来訪してきたところから事態は転がりだす。住まいも父の宗男に張られ、仁菜はメンバーのもとを転々とする。

9話でもそうだったが、メンバーに話してその意見をフィードバックする姿勢ってのは仁菜の素直さゆえだし、元は育ちが良いんだなと。

家族との別離を話すルパの重い言葉とあえて突き放すことで仁菜をムキにさせる桃香の態度が印象的。前者は、普段は飄々としたルパだからこそ"話せるのなら話した方が良い"ってシンプルな気持ちが刺さる。後者は、いろんなものを乗り越えた桃香と仁菜だからこそのやりとりで、一周回ってこういう時に先輩っぽい雰囲気を出す桃香に成長を感じた。「(仁菜が引きずっているのは)父親が味方してくれなかったことじゃないのか」と仁菜に正論をかます桃香が頼もしい。

実家に着いて早々、剪定されてない枝にぶつかる仁菜、実家の荒れ具合を示唆するようだった。

父と母に見つかり、さっそく家族会議。襖越しに父と話す仁菜。言葉の応酬が辛い。

上京するにあたって全てお膳立てしてきたという父・宗男、全て自分でなんとかしてきたという仁菜。二人の主張は真っ向からぶつかってるように見えるが、実際は目線がかなり違う。生活に困らないようにいろいろ用意してくれてたのは仁菜もわかっていたと思う。それでも実際に上京すると電車の乗り場も降りる場所すらわからず自分の頭で考えないといけない——そんな素朴なことから生活の根幹まで、仁菜自身のことはたしかに仁菜がどうにかしてきた。それを"子どもで庇護される存在だから"と押さえつけられるのは仁菜にとって耐え難い。

話は平行線のまま翌日。宗男は仁菜を連れ、仁菜が通っていた高校に行くことに。そこで学校側の謝罪文を出される。

形式的な謝罪を繰り返す校長に食い下がる宗男。「もうやめて」と制する仁菜。仁菜に対して憤っているだけじゃなく父親なりの罪滅ぼしをしたい意志は見えるけど、仁菜はもはやそんなことを求めてない。愛があるからこその宗男の行動なんだけど伝わっていないのがもどかしい。「お前は被害者なんだ」宗男の愛ゆえの一言が、仁菜にとっては自分の意志を押さえつける力に感じていたんじゃないかと思う。

帰路、気遣う母を無視して自室にこもる仁菜。ここで姉の涼音と会話を交わす場面が個人的にはハイライト。

姉に語られる仁菜の言葉がリリシズムに溢れていて、それに呼応するように宙を落ちているような飛んでいるようなカット。仁菜がロックに出会ったときの高揚感がそこにはあった。『空の箱』に勇気をもらって飛び出し、上京してバンドをやることで本当の自分になれたことを語る清々しい表情。

家から離れたことで本当の自分になれたことを妹から聞かされる——そこに一筋、涼音が涙をこぼす。当時救ってあげられなかった後悔や生きづらさを抱えた妹が救われたことの安堵、いろいろなものがないまぜになった涙だと思った。

自分の心情は涙に任せて「わかった」の一言で済ませる涼音に泣けた。

その後に父と母の想いを汲んで「(父と母は)間違いなくあんたのことを愛してる」と伝え、「ありがとう、生きててくれて。私も愛してるよ、仁菜」と涼音自身の想いも伝える。

本当の言葉を話してくれた妹に対して、本当の言葉で包み込むお姉ちゃんにさらに泣かされた。仁菜の行動原理の全てを理解できないけれど、 多くの時間を共に過ごした姉として、成熟した大人として、ちゃんと愛を伝えようとしてるところにしっかり食らわされた。

仁菜が川崎に戻る朝、聴き慣れた『空の箱』が父の部屋から聴こえてくる。襖越しに会話を交わす中、「良い曲だな」と宗男が発する。

やることなすこと何もかも押さえつけられた仁菜が、突然自分のルーツを認められた。そう、仁菜が欲しかったものはとても素朴でシンプルなものだった。でも同時にとても難しいものでもある。

父の価値観を変えて、自分を理解してもらう——その瞬間が不意に訪れた。

宗男自らが敷いた規律では仁菜を理解できない。だからこそ『空の箱』を、娘が愛した曲をたくさん聴いたのだと思う。娘のことを理解したいと。まっすぐで不器用なその歌詞を読んで、自身を重ねたのかもしれない。結果、心からの言葉で娘のロックを認められた。

その後のシーンは、価値観を認めた上であらためて送り出すという宗男の律儀さが出ていてすごく好きだった。仁菜からしたら自分の愛してる曲を認められただけでエールになってて、そのまま覚悟を決めて川崎に戻るはずだったのに、もう一度ダメ押しのように「行ってらっしゃい」と送り出されちゃうんだから棘の生やしようもない。

ロックを題材にしてる時点で、反骨精神とか反体制的なスタンスは描かれるべきだと思っていて、そこが一番表現されていた話数のように思う。仁菜の反抗から井芹家の規律が崩れていく様はまさにロックだろと。

それとガルクラでロックを描く上で、"成熟と未成熟"がテーマの一つになってるように思う。仁菜も成長はしてるんだけどどこか未成熟な面があって、そのどこまでも変わらないまま規律やシステムに立ち向かう姿勢が今回はより描かれてた。未成熟な仁菜の描写だけじゃなく、姉や母や父という成熟した大人たちが仁菜のひたむきさを認めることで、仁菜の未成熟だけどまっすぐなロックがより浮き彫りになる。そんな演出だったように映った。

あらためて生まれ故郷を飛び出し、生まれ変わった川崎の地で「ただいま」とメンバーに伝える仁菜。

そのままの仁菜でだんだんとポジティブな雰囲気になっているのが感慨深い。モチベーションがパフォーマンスに直結するタイプのボーカルなのでフェスでのアクトに期待が高まる…。

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めっちゃ私的なことだけどお家で作るタイプのカレーが本当に好きだから、涼音との会話で母ちゃんのカレー出てきたときに微笑みながら泣いてた。

仁菜が実家を出るときに、折られた枝のカットが差し込まれた。枝の断面が乱雑な折られ方で宗男の感情が発露してるように見えて好きなとこだった。

紆余曲折あってシンプルに想いをぶつけ合うって展開好きだなぁほんと。

あと、スカウトの三浦が降幡愛なのをクレジットで知ってやっぱり泣いた。酒井監督の作品にまた出てくれて、本当にありがとう。

家族に対する棘が消え去った仁菜がどんな歌詞を書くのか、次のライブシーンめちゃくちゃ楽しみ。

【感想】ガールズバンドクライ 第9話「欠けた月が出ていた」

怒涛の回を終えての智の掘り下げ回。

智もまた、めんどくさくて真っ直ぐなやつ。

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バンド練習の合間、仁菜の部屋のエアコンが故障した話題から始まる。桃香は自ら作った曲に納得いってない様子。何か言いたげな智にルパが話を振るが「いいんじゃないの、別に」とかわされる。

一連のシーンで仁菜の「私、今の好きですけど」と修正の必要性を感じてない口ぶりが、そもそも桃香の曲が大好きなファンだったことを思い出させる。曲について全肯定な姿勢は微笑ましいが、同時にミュージシャンとしての成熟度はあとに出てくるギターの腕前と合わせて発展途上。仁菜のボーカル以外の今の立ち位置がわかる回でもあった。

エアコンが故障したことから仁菜は智とルパの部屋へ。さらに二人の部屋のエアコンも故障させ、すばるの部屋に(智とルパの飼うヘビを連れて)。

8話まで物語の本筋を担うのが仁菜と桃香でかつシリアスな展開が多かったからあまり見えてこなかったけど、仁菜って心を許すとかなり図々しくなるんだなと思った。シリアスな場面でも4話のすばるとのエチュードでも、演技にかこつけて本心をぶっ込んだりと気を遣うことがあんまりない。逆に言えば、気を遣われることもよしとしないのは今回の9話でよくわかった。

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【感想】ガールズバンドクライ 第8話「もしも君が泣くならば」

桃香の歌が巡り巡って桃香自身を救うって流れが美しかった。

いつもより長めになっちゃったけど8話の感想、ゆるりとお付き合いを。

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導入として桃香の高校時代から始まったとこにさっそく撃ち抜かれた。「難しいからこそ退路を断つんだよ」不安がるメンバーを鼓舞して、4人全員で退学することを推したのは桃香なことがわかった。桃香の声色が今よりも溌剌としてて、元はポジティブなフロントマンだったんだなと想像させる。

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【感想】ガールズバンドクライ 第7話「名前をつけてやる」

仁菜にとっては青天の霹靂、桃香が自身の去就をさらりと突きつける。

大事なことをさらっと言うもんだからゾクっとした。ということで感想。

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冒頭の物販シーン、5人体制バンドで名称が変わる予定の新川崎(仮)のグッズを作って売る仁菜。仁菜なりにバンドへの利益を考えてるのに、それ以上にどうにかしなきゃって感情が逸る。コメディなノリだけど後先を考えない仁菜の性分を最初から見せていくのは7話の展開を考えると良い掴み。

チェキ撮影をやらなきゃ活動がままならない事情が伺える。5話の男バンドマンが嫌った"ガールズ"のノリに頼るしかない世知辛さを描きつつ、ルパの人心掌握に長けた部分も描かれた。誰に対しても笑顔で接するルパの処世術的な振る舞いが、かえって鉄仮面のようで少し怖くもある。

駆け出しの頃にお世話になったアーティストから桃香にオファー。一応、メンバーにも概要を話すが仁菜には勉強の話を持ち出して牽制する。が、ムキになった仁菜によりメンバー5人で参加に。

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