マミヤの忘備録

映像作品、ラップ、その他諸々について記したいなぁと思ってます。

【感想】ガールズバンドクライ 第9話「欠けた月が出ていた」

怒涛の回を終えての智の掘り下げ回。

智もまた、めんどくさくて真っ直ぐなやつ。

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バンド練習の合間、仁菜の部屋のエアコンが故障した話題から始まる。桃香は自ら作った曲に納得いってない様子。何か言いたげな智にルパが話を振るが「いいんじゃないの、別に」とかわされる。

一連のシーンで仁菜の「私、今の好きですけど」と修正の必要性を感じてない口ぶりが、そもそも桃香の曲が大好きなファンだったことを思い出させる。曲について全肯定な姿勢は微笑ましいが、同時にミュージシャンとしての成熟度はあとに出てくるギターの腕前と合わせて発展途上。仁菜のボーカル以外の今の立ち位置がわかる回でもあった。

エアコンが故障したことから仁菜は智とルパの部屋へ。さらに二人の部屋のエアコンも故障させ、すばるの部屋に(智とルパの飼うヘビを連れて)。

8話まで物語の本筋を担うのが仁菜と桃香でかつシリアスな展開が多かったからあまり見えてこなかったけど、仁菜って心を許すとかなり図々しくなるんだなと思った。シリアスな場面でも4話のすばるとのエチュードでも、演技にかこつけて本心をぶっ込んだりと気を遣うことがあんまりない。逆に言えば、気を遣われることもよしとしないのは今回の9話でよくわかった。

気乗りしない智を除いた3人でトランプをしているところに桃香が到着。

ヘビが嫌いという桃香の意外なような、納得なような一面が見れて満足。ヘビが巻き起こすパニックの一連のシーンのテンポ感がけっこう好きだった。ルパの「ナイスビール!」とか表情とか声色が良いアクセント。

騒がしいまま夜を明かした一行。仁菜はいつかステージで桃香と弾くために練習しているギターの腕前を智とルパに見てもらうことに。「そんなママごとギターじゃ一生かかっても上手くならない」しつこく意見を求める仁菜に智が咄嗟に発した一言、仁菜の瞳から涙がこぼれる――その夜、自分の言動に気分が沈む智。ルパが「喜んでましたよ」と声をかけ、智は「そんなわけないでしょ」と返す。

良くも悪くもオブラートに包んだり、嘘をついたりできない智の性分が発揮されたシーン。これがコミュニケーションが苦手な理由でもあるのだろう。

以前の話数でもあったが、今回も智とルパが真反対の主張をする。ポジティブというか楽観的に物事を捉えるルパ、その成熟した姿勢は智の保護者のようでもある。

仁菜がギターの感想をもらいにすばるの家に行く。すばるは智と同意見、肩を落とす仁菜。すばるは智の性格を"臆病で他人と距離を取るけど近づくと反抗してくる"といった感じに分析。仁菜と似た部分があることに仁菜自身が気づく。

そこに智とルパがやってくる。ギターを練習する仁菜に「いいんじゃない」と思ってもいないことを口走る。「どうして嘘つくの?」仁菜の問いに、無言でヘビを引き取って帰る智。

智が自分に似た性格だからこそ出た仁菜の問い。嘘をつくことよりも妥協した態度だったのがいやだったのかなと思う。どんなにきつくても自分を成長させてくれる言葉に触れたいモチベーションが仁菜にはある。それが自分のためやバンドのためでもある。転じてバンドのためであれば、嘘をつくことを許容することもある。すばるのおばあさまへの対応なんかはそうだ。

ルパは仁菜とすばるに、良いものを作るために突き詰めてしまう智の性格が災いし、散々かつてのバンドメンバーと衝突してきて、今では本音をぶつけることを智は恐れていることを語る。

この部分が仁菜と智の違いだろう。音楽もバンド活動も仁菜より経験値があるからこその恐怖や諦め――智なりの悩みを感じ、辛そうな表情の仁菜。

その後、桃香にもギターを聴かせ、一緒にステージで弾けるか尋ねると「本気か?」と一蹴される。

一応、最後の一人まで意見をもらいに行く仁菜。単に律儀というよりは自分の立ち位置を知ってそれをバネにしようとしている節がある。それは智が今まで出会ったバンドマンにはなかった態度だ。

夕方、智とルパの部屋。なかなかエサを食べなかったヘビが卵を丸飲みにする。その姿を二人で見ながら「どんなに慎重で臆病でも、ただ見てるだけじゃ、なにも進みませんからね」とルパが声をかけ、二人で散歩に出かける。

ここでの智とルパの問答、智の本心と思いやりが交互に語られる中で、仁菜自身が「本当に上手くなりたい」ってモチベーションがあるからこそ、本音をぶつけるに値する人間だってことを徐々に智に理解させていくルパのディベート巧者な部分が光る。

夕景の川沿い、ギターを練習する仁菜に向かって「下手くそ!」と叫ぶ智。その言葉を受け「絶対上手くなってやる!」と気持ちを新たにする仁菜。

コミュニケーションの取り方は人や関係によって千差万別だろうけど、これが彼女らにとって最適な方法なんだろうなって思わせる。トゲトゲ間では本音をぶつけ合うっていうのが、基本的なコミュニケーションの取り方になるのだろう。とてもシンプルだけど、一番難しい。

バンド練習、桃香の曲に意見する智。それを聞いて"そうこなくっちゃ"って表情をする桃香

コンポーザーって立場で対等に話ができるやつがようやく現れたって桃香の嬉しさが溢れてる。本音をぶつける方が喜ばれることに、智もようやく気づいてきたのかもしれない。

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高校中退で天涯孤独の智の保証人がルパってのがリアルだし、一蓮托生な間柄なのをこういうとこでも出してくるのが面白かった。あと、過去編のルパが今よりもさらに物腰柔らかそうで、当時のメンバーの圧にも押されてた印象があった。智から保証人をお願いされたぐらいから覚悟が決まって、今の"ルパさん"になったのか、さらにルパにフォーカスした話も観たいところ。

次はとうとう実家に帰郷する仁菜。予告で明かされてるとこだけでもヒリヒリする。