マミヤの忘備録

映像作品、ラップ、その他諸々について記したいなぁと思ってます。

【感想】ガールズバンドクライ 第13話「ロックンロールは鳴り止まないっ」

いよいよ、最終回。

展開の凝縮っぷりに驚きつつ、カーテンコールまでの流れが見事。

いつも通り、ごゆるりと感想にお付き合いください。

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高校の教室で仁菜とヒナが問答を交わす。いじめを見過ごせない仁菜が同級生を助け出そうと動くが、ヒナにたしなめられる。「間違っとう方が正しかって、やっぱ変とよ」義憤に駆られ仁菜が教室を出る——昔の夢を見て目が覚め、うなだれながら事務所に向かう。仁菜の正義感と正しさへの執着は昔から変わらない。結果、それが親友との別離に繋がった。

事務所で三浦から、認知度は上がっているのに想定を下回る再生回数なことを告げられるトゲトゲ。矢継ぎ早に宣伝側の責任と謝罪する三浦、桃香が曲の問題であることを認める間すら与えないほど理路整然と話をまとめる。

三浦のプロフェッショナルな態度にリスペクトしてしまう。メジャーバンドとしては駆け出しで満を持してのシングル、精神的な負担をかけない配慮はさすがマネージャー。その配慮に気づく仁菜以外の4人、仁菜はそもそも曲に問題があるとは絶対に認めないのがブレない。

部屋で一人、トゲトゲについてエゴサしてネガティブなコメントにキレまくる仁菜。SNSを弄っているとダイダスのヒナからフォロー申請が来ていることに気づく。迷いながら承認すると、ヒナからカフェに誘われる。"三浦からダイダスの事務所に、両日両バンドが出演する形式の対バンへの変更を請う連絡があった"ことを仁菜に伝えるヒナ。間違ってたことを認めれば助けてあげると仁菜を煽るが、当然のように反発し仁菜はその場を去る。

ヒナの仁菜に対する焚き付け方が露骨すぎて、めちゃくちゃ歪んだ友情がここにあった。「全部さらけ出して生きてやるんでしょ?」と仁菜を挑発するけど、新川崎(仮)のときの仁菜のMCを引用するあたり、仁菜たちが話題になり始めた頃から気にかけていたことが伺える。敵に塩を送る方法がひん曲がってるけど効果的で、仁菜のことを熟知したヒナの性格の悪さが光る。それに比例して仁菜への友情もまた厚く感じた。

トゲトゲのメンバーに呼び出され桃香の部屋に行く仁菜。"ダイダス側から同じライブに両日出演の打診があった"と三浦から連絡があったことを伝えられる。仁菜はそれを断固として拒否する。そしてヒナとのやりとりをメンバーに伝え、「だって私、間違ってないから!」とコタツの上に立ち桃香のエレキギターをかき鳴らす。

悔しさ・怒りを声とギターに乗せる仁菜――それを見つめる各メンバーが抜かれるシーンで、桃香だけが仁菜のその姿に目を見張る。「あのときの私を否定しないでください」と"桃香の歌"が叫び散らかす姿を見てロックを感じちゃうところに、仁菜と桃香の一蓮托生な関係性が色濃く出ていて好きだった。お互いがお互いのロックを呼び覚ますからこそ、バンドじゃなければならない。

無力感を突きつけられながらAパートは終了。

Bパート始まりは近所の神社。仁菜がいじめられた経緯、ヒナとの絶交が語られた。助けたはずの子がいじめグループの一員になっていじめてくる、そういった部分もわかっててヒナは仁菜に忠告していたように思う。

「ヒナっていう子の方が正しいわよ」と述べる智。同時に「でも、だから私は惹かれたんだと思う。あんたの歌声が好き。たぶんルパも、桃香も、すばるも」と意固地な仁菜のあり方をボーカルの資質と合わせて肯定する。メンバー全員の決心が固まっていく。

智のこのシーンでのセリフが象徴的で、仁菜は"正しくない"けど、同時に”間違ってない”という仁菜のあり方が端的に示されたシーンだった。それを浮き彫りにするのが、仁菜と似た者同士な智というのが上手い。智の方は9話で自分が"正しくない"自覚はありつつも、仁菜のひたむきさを見てあらためて"自分は間違ってない"という想いを持てた。だからこそ自分が"正しくない"ことを自覚せず、ずっと"間違ってない"ことにこだわる仁菜が時に痛々しいけどまぶしく見えて、智もその想いに心が動かされたのだと思う。苦言を呈しながら本音を話す智だけじゃなく、他のメンバーもまた仁菜に心動かされトゲトゲに本気で賭けている。

逆に仁菜のアンビバレンツなあり方が原因で離別したのがヒナで「正義の棘出して、繊細振りかざして、みんなを傷つけて。なんか、自分が悪者に見えてくる」と過去でも言われたように、仁菜のあり方が"間違っていないか"という部分をいろんな面から揺さぶってくる演出が要所で出てくる。三浦に決意を伝える次のシーンでもそうだ。

ツーマンライブでの対バンの打診を断るトゲトゲ、集客や売上が大幅減になる選択なのは理解している。その分の責任を取るために"退所届"を三浦に提出する。三浦が理由を問いただすと、仁菜がヒナから連絡があったことを伝える。三浦の尽力があるのはわかっているものの、ダイダスに頭を下げる形のツーマンを受け入れられず詫びる。三浦はそれを受け止め「そんなあなたたちだから一緒にやりたかった」と最後の協力を申し出る。

このシーンでも仁菜の"正しくなさ"が色濃く発揮されている。プロとしての職業倫理という意味では確実に誤った選択なのだけど、それを受け入れると間違ってたことを認めてしまうことになるからこそ、仁菜たちはわがままを通すしかない。トゲトゲによるわがままで事務所が被る損失——つまり "間違ってない"ことを貫く代償、それを仁菜たちで背負う決意は、世間とはズレてても彼女らなりの倫理が感じられた。そしてそのスタンスに動かされる三浦、個人的には一番この話の中で腹括ったロックな人物だった。「お金と契約のことは事務所と三浦がなんとかします」ではすまないレベルだろうけど、裏で矢面に立つことを覚悟してるであろう三浦がかっこよすぎた。

エンジニアの中田にも退所を報告するトゲトゲ。「10年経って生き残ってたらまたおいで。タダで仕事してあげる」と中田から言葉をかけられる。『運命の華』が完成した際に自分の信条を曲げて、評価してくれたことを思うと中田もまた、それなりにトゲトゲに賭けてたのかなと。

行き慣れた吉野家、「この5人でずっとやっていく。絶対にやめない」——仁菜たちは紅生姜で誓いを立てる。ここで仲間と出会えたからこそ、この街が好きだと桃香に伝える仁菜が良い。川崎にルーツを持たない5人が導かれるように集まって、絆を結んだ。あなたと出会えた場所だから、あなたがいる場所だから、その街が好きになる、というのがストレートでシンプルで胸に込み上げるものがあった。

迎えるライブ当日、奇跡は起こらずまばらな集客で、ライブ前からトゲトゲは大敗を喫する。メンバーは楽屋で談笑。各々のルーツや変遷が詰まった衣装を着ていて感慨深い。旧ダイダス時代はメジャーでのしがらみから抜けるために一人脱退した桃香がメジャー時代の衣装を纏っているのが印象的。今度は一人で舞台を降りるんじゃなく、5人での門出。それぞれが歩んできた過去を、それぞれが肯定した瞬間がさりげなく描かれた。

楽屋でポジティブな反応を示すリスナーがいることがわかり「本気って伝わるんですね、桃香さん」と嬉しさをにじませる仁菜。そこから話題が仁菜のギターの腕前に移る。本気で打ち込んでるからこそ、絶望的な状況に陥ってもギターの練習は欠かさなかった。ギターボーカルとしての仁菜の門出だ。

仁菜の"未成熟"な部分はたくさん描かれてきたけど、"成長"していないわけではない。仁菜の中で変えたくないこと、変えたいこと様々あると思うけど、それも全て"間違ってない"と思いたいから。無理やりに自分の想いを通すだけじゃなく、その想いを通す力をつけるための努力はする。そういう実直さが傍若無人なだけではない仁菜の魅力だ。

ライブ直前、ヒナがバックヤードに残したいたずらに仁菜が憤慨する。その様を見て、すばるは「案外、ヒナって子はニーナに折れてほしくないのかもしれないね」と核心を突く言葉をかけ、それに他のメンバーも同調する。このとき物語の主人公なのに、おどけながらとはいえラスボス扱いされているのが、仁菜のアンビバレンツな存在感を表していた。

そして始まるライブ――まばらに集まったオーディエンスへの挨拶はほどほどにMCへ。 二階席にいるヒナの姿に気づき眉間に力が入る。過去のいじめについて自分語りを始める仁菜。いじめられている同級生を助けに颯爽と歩く廊下――「教室から助けに向かう途中、嬉しかった。なんか誇らしかったし、そんな私が好きでした」と思い返す。結果的に自分がいじめられることになったけど、「何一つ後悔してません」と語り、在りし日にダイダスの歌をヒナと聴いて語り合ったことを思い出す。

形は違えどダイヤモンドダストの――桃香の歌で強くなれたのは仁菜だけじゃなく、ヒナもそうだった。ヒナが芸能の道を志した経緯は語られてはないが、間違いなく桃香の歌に背中を押されたことがわかった。絶交して遠い日の出来事になっても、あの日のロックが今も変わらず二人の中に響き続けている。

今回、仁菜の変わらない"初期衝動"がヒナの挑発だったり、三浦のサポートだったり、メンバー以外の周囲の人すら動かすきっかけになってるのが個人的にはロックだった。

負け戦なことがわかっててもトゲナシトゲアリのために来てくれた"へそ曲がりな人たち"に仁菜が感謝する。負けてないことの、間違ってないことの証明のために「私たちの始まりの目撃者になってください!」と高らかに声を上げる。

始まった曲は『運命の華』。正直、今までのハードな曲とは違って爽やかなテンションに面食らった。ソリッドな音作りとは違う、手拍子を誘うリズム、軽やかなピアノ、泣きのギターが往年の邦ロックのサウンドを彷彿とさせる。それでも、桃香の歌詞と仁菜の前のめりな歌声が合わさるとトゲナシトゲアリの曲になるのが面白い。仮の歌詞はそのまま採用、バンドをする喜びに溢れているムードなのが微笑ましい。

物語の演出としても、過去から繋がって今を肯定するようなポジティブな絵作りが成されてて、キャッチコピーの"怒りも喜びも哀しさも全部ぶちこめ"を『空白とカタルシス』とは別の形で表現したものになっていた。いろんな感情が渦巻いたあの日がどんなに遠くなっても、どこまでも近くにあって、仁菜、桃香、すばる、智、ルパの内で響き続けている。

あえてメジャーデビュー曲、それも大コケした曲を演奏するというのも、自分たちが作った曲への自信と、つまづきすら肯定する姿勢が見えてかっこいい。

『運命の華』は劇中のリスナーには受けなかった。その理由は曲調の変化もあるかもしれないが、もしかしたら"トゲナシトゲアリの物語"がまだ浸透していないからなのかもしれない。仁菜たちのモチベーションや目標がリスナーに浸透することでこの曲の――ひいてはバンド自体の世間的な評価がひっくり返る可能性もある。そう、『ガールズバンドクライ』をテレビで視聴している現実の"私"が、仁菜たちの物語を知り、トゲナシトゲアリの曲に食らったように。

ライブ後のカーテンコールで明るいテンションのトゲナシトゲアリ、自分たちの前途を照らすようだった。やっぱ笑顔で見送れるのって良い。タイトルバックからEDに繋がり、その映像が本編後の物語になってる仕掛けにも食らった。

全体を通して振り返ると、物語のテンションとしては11話がクライマックスになるような流れだったけど、プロになって事務所を辞めるまでは描きたかったのだと思う。絶頂まで行ったとこで幕引きではなく、1クール分の物語のエピローグとして"正しくない"けど"間違ってない"仁菜の挫折と再起を描くところに、物語とキャラに対するスタッフ陣の誠実さを感じた。ここから先があるとすれば、数字や市場という音楽ビジネスの絶対的な原理との戦いになるだろう。今回はビジネス的には厳しい結果になったが、"負けてない"とステージに立ち続ける限り、"間違ってない"と叫び続ける限り、トゲナシトゲアリは負けない。

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まさか興業的に全負けする展開になるとはってのが正直なところ。同時に間違ってないことを証明するための物語、そのプロローグに立ち会っている高揚感もあった。

仁菜の上京を物語のスタートラインにして、物語のテーマから飛躍することなく地に足ついた展開を描いた結果、CLUB CITTA'のあのライブを結末にしたのは大胆だけど、納得がいった。要所で急展開の驚きはあったけど、筋が通っているところに花田十輝の凄みを感じる。

いじめられている子を助けようと向かう仁菜のカットがヒーローみたいですごい好き。その後、仁菜自身が不幸に見舞われたとしても後悔せず今の自分を誇る姿がまぶしかった。ニチアサだったり、多くのヒーローを擁する東映の制作でヒロイックなカットが観れたのが嬉しかった。

今回は11話のすばるの「だからさ、続けようよこのバンド。もし今日がダメでも」というセリフを思い出してしまう展開で、上手くいかなくてもやり続ける姿が描かれた。それはたぶんなんにでも言えることだし、ガルクラを観た人へのエールなんだろうって受け取ってる。

久しぶりの酒井和男が監督、花田十輝が脚本の新作。一年前の発表時は『ラブライブ!サンシャイン!!』とは違う作品なんだって気にしないようにしてたけど、放映日が近づくにつれてそわそわと期待値が上がってきたことを1話の感想記事の最初の方に書いた。

見終えて思うことは追ってよかったなってこと、このアニメを好きになったのは間違ってなかったってこと。この3か月、本当に本当に楽しかった。これからのリアルのトゲナシトゲアリの活動も楽しみ!

さすがに長くなったので最後に…

TVアニメ『ガールズバンドクライ』の制作に携わった全てのスタッフ・キャストのみなさん、本当にありがとうございました!

そして、ここまで感想記事を読んでくださったあなたにも、万感の感謝を!


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