マミヤの忘備録

映像作品、ラップ、その他諸々について記したいなぁと思ってます。

【感想】ガールズバンドクライ 第6話「はぐれ者賛歌」

目標をどこに定めるか。仁菜の試行錯誤、右往左往する様が愛らしいと同時に目指すものが明確になるほど桃香とのギャップが切ない。

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智とルパ、beni-shougaの二人の制作風景から始まるアバン。智が防音段ボールを被るが、救急車のサイレンでレコーディングができず…。在りし日のバンドメンバー(と思われる)との写真のカットで、二人もまたメンバー脱退を経験したことがわかる。

このアバンのボカロで作曲したボーカルRECの難しさを話すシーンは、曲を作る能力が必ずしも歌う能力と比例するわけではないままならなさを感じさせる。ルパが新たなボーカルとして仁菜をおすすめしていて、バンドが(本人の主観的に)より良くなるために動いている点でルパと仁菜は似ているなと。

トゲトゲ曲はボカロを意識して部分があるらしいけども、こうも思い切りボカロで作曲する人物を出してきたのは意外だった。

仁菜たちは銭湯で前回のライブの振り返り。今のダイダスよりも桃香を支持するオーディエンスの反応に喜ぶ仁菜、対してそっけない桃香

桃香に食らった仁菜が、桃香の作る歌のすごさを広く伝えられるようにと思えば思うほど安直な発想や衆目を集めるアイディアしか出てこない。バンド練のシーンでも「ダイヤモンドダストと同じ」とすばるに指摘されるほどに数字の引力に取り憑かれていて、なりふり構わない姿勢と周りが見えない性分が良くない形で合わさっている(さらに仁菜個人の事情がそれをブースト)。

暴走気味にバンド活動の主導権が仁菜中心になりつつあるが、桃香もそれをやめさせたり代案を出したりはしない。現状維持で音楽を続けたい今のスタンスと、続ける先で二人の人生を壊すかもしれない引け目から自縄自縛に陥ってるように見える。練習して、曲作って、ライブする――それが桃香のスタンス。具体的なイベントや場所を目標にする以上に、音楽をやり続けること自体を目標にする方が遥かに難しいのはわかっているだろう(かつての桃香がそれを証明しているし)――だけど明確な目標を示せないジレンマ。しがらみを抜きにした本心はこれからの物語で現れてくるとして、それがどうぶちまけられるか楽しみなところ。

智とルパも似たような悩みを持つ。現状維持の活動のままでも「それも悪い考えではない」と理解を示すルパ。だけど、かつて目標にした武道館の写真を「滑稽です」と剥がすよう促すところに、智を支えるだけじゃなく明確にルパなりの意図があるのがわかって面白い。仁菜もこれぐらい人を動かすのが上手ければ…。

くすぶる智を決心させたのが、バイト先の吉野家に来た仁菜とすばるの「だって私たちは間違ってないもん」という会話を受けてなのが、反骨精神を宿したもの同士という感じで好き。

智とルパからのスカウトを受けつつ4人で武道館を見に行くシーン。仁菜の「ここで歌ったら間違ってなかったって思えるよね」というセリフで、仁菜の目標が「間違ってない」って精神性だけじゃなく"数"として明確化した――でも、それを叶えても満たされることがなさそうな気がするのが仁菜というキャラの面白いところ。

beni-shougaの二人について、桃香にどう伝えるか仁菜とすばるが問答するシーンで「嘘つきって言わないか」と仁菜に念を押すすばる。ちょくちょく"嘘つき"呼ばわりされて傷つくときもあるんだろうな…って塩梅が妙にリアル。

二組で一曲を共同制作するという体で話が進む。桃香も良い音楽には抗えないはず、というすばるの予想と、桃香には「良い音楽を作りたい生粋のミュージシャンの桃香」と「音楽からドロップアウトした桃香」の両面があることに触れる。俯瞰して物事を見れるのはさすがバンドの屋台骨のドラマーらしい洞察力だなと。

すばるが言うことに加えて、仁菜とすばるの二人が本気で活動にのめり込み始めて迷いが生まれたのもあるのだろう。要所で桃香のセンチメンタルなカットが入るのが印象的。

スタジオでの合同練習、初めて5人で合わせたにもかかわらず手応えを感じるセッション。仁菜単体のオーラ(?)は棘だけど、5人合わさったときには色とりどりの風になっているのが新鮮。その風を背中越しに浴びる仁菜、フロントマンは立ち位置的にバンドメンバーを背負ってるし、メンバーに背中押されてるんだなって納得させられる絵面だった。

セッション後、仁菜は5人でやっていきたい旨を伝える。桃香の歌が間違ってないことを証明したいと話すが、返答はない。2話のときとは立場が逆転したように、今度は仁菜が桃香口説き文句を聞かせる。2話と違うのはポジティブな反応は返ってきていない。

シーンが変わって夕方、智とルパの部屋。5人の中で桃香だけがベランダに出て物思いにふける表情。部屋の中には入らないし、視線も向けないというのが活動への迷いを思わせる。かといって太陽にも背を向けているあたりモチベーションはまだ狭間にあるような、繊細な演出だった。

EDが流れ始めて、仁菜が風の吹く方に顔を向けると逆光の桃香が映る――この流れが6話まで見てベストカットだなってぐらい好き。このカットは絶対見せたかったんだろうなってぐらい決まってた。次回への最高の引きだった。

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智とルパが本格的に絡んできて、よりそれぞれのキャラの解像度が上がったなと。特に仁菜とすばるのやりとりがめちゃ仲良い同級生のムーブって感じで、回を重ねるごとにテンポがよくなってる。それと反比例して桃香とのギャップが開くばかりで、どうモチベーションが重なる展開になるのか。桃香の救済とか決意はメンバーの中で最後になりそうな予感がするので(サンシャイン1期の曜みたいな)後半まではまだくすぶってそう。

今回の風の演出、仁菜の棘もそうだけど漫画の集中線とか効果みたいになってて3Dだけど二次元的な表現になってるのがすごい好きだった。3Dだけど日本のアニメ見てる!って気分。

今回の内容と関係ないけど、ロックで風というとナンバーガールの『鉄風 鋭くなって』がパッと頭に浮かぶ。当時、ナンバガをちゃんと通ってなかったけど、あらためて聴くとたしかにかっこいい。ナンバガの曲もサブタイトルに来そうよねぇ。

ということで余談でした。また次回の感想で!