マミヤの忘備録

ラップ、映像、その他諸々について記したいなぁと思ってます。

【感想】ガールズバンドクライ 第5話「歌声よおこれ」

先日、用事があって川崎に行ったついでにラゾーナを散策した。

歩いてるとここら辺でライブしてたなぁとか勝手に浸ってしまって、聖地巡礼をしに行ったわけではないけど、懐かしさに襲われた。

島村楽器にも寄ってメンバーのサインを一通り写真に収める自分に「おれファンなんだな…」って再確認したりなど。

余談から始まりつつ、以下5話の感想。

―――

意味深に現在のダイヤモンドダストとその新メンバーに触れるアバンタイトル。その後に波乱が訪れるのは確実だけど、どう描いてくるのか高揚感があった。

桃香の古巣のライブハウス"セルビアンナイト"でライブをすることに。チケットノルマを巡って仁菜の誠実さを通り越したかけ引きの下手さをこれでもかと描いてるのが面白い。いつまでもこのままめんどくささを保っていくのだろう。

セルビアンナイトの店長から現ダイヤモンドダストのライブチケットを譲られた仁菜とすばる。二人は疑念と興味からライブに行く。ここからの展開が怒涛のシーンで圧巻だった。

男性ばかりの客層の違和感、キャッチーなアレンジの『空の箱』ーー仁菜視点での不穏な要素を積み上げてからの新ボーカルの姿を見た瞬間に「お前が歌うな」と口にする仁菜。

悲劇として描くのはわかってたけど、こうきたか!って感じで仁菜に同情して泣けるのと同時に演出があっぱれで二重に泣けた。仁菜が画面いっぱいに最大級の棘をほとばしらせる絵面に説得力がめっちゃあって、演出が積み重なったからこそのカタルシス

その場にいられず外に出て、わめき散らかす仁菜。新ボーカルが絶好した友達だったことをすばるに伝える。ここの仁菜のわめく演技も圧巻で「クソが!◯ね!」って深夜番組とはいえ、主人公がここまでの発言していいんだって感心した。

その後、桃香に内緒でライブに行ったがそれはお見通し。険悪な仁菜と桃香の舌戦に決着をつけるべく居酒屋に。

ここでの言い合いの末に桃香が、当初のダイダスの目標が「おばあちゃんになってもオリジナルメンバーでバンドをやる」だったことが明かされる。あまりにも素朴な願いだけど、そこに旧ダイダスの仲の良さを感じさせる。だからこそ桃香のエゴでその願いを破壊したことに罪悪感を持ってるし、仁菜に今のダイダスについてとやかく言われると腹が立つ。でも、本当はメジャーを蹴ってでも自分のわがままに着いてきてほしかっただろうな、というのは想像に難くない。

自分たちがやりたいことをできるように今は我慢して、メジャーに行こうと説得するメンバーの話も語られた。桃香がソロになって苦労したように、現ダイダスメンバーもいきなりフロントマンを失うことになって相当苦労しただろうって、 現ダイダス側の描写はまだそこまで出てないのにセリフでダイダス側の解像度を上げてくれるのは上手いなと。

あとここのシーン、「むかついたから」って理由でお茶かけられるすばるが不憫すぎるし、どう考えても仁菜がやばい人なのが良い。

やばいといえば、仁菜の回想で学校の放送室を占拠して『空の箱』を爆音で流してたことが描かれた。いじめとか関係なく規律や規則にとにかく心の棘を刺激される性分のようだし、まだ描かれるであろうバックグラウンドが気になるところ。

泥酔した桃香を介抱したあとに、意気消沈する仁菜に「怒りも喜びも悲しさも、全部ぶちこめるのがバンドの良いところ」とすばるからのアドバイス。自分の生活や日々の振る舞いが、芸として滲み出ることをおばあさまから口酸っぱく言われてきたすばるだからこその言葉だなと。降りかかってきた悲劇を音楽の糧にするーーある意味すばるぐらいの距離感じゃなきゃ言えないだろうなってのが絶妙。

仁菜の無軌道で勢いだけ有り余るエネルギーを、発想の転換で昇華させる相棒という感じですばるの頼もしさがまた一つ見えた。

ライブ当日、メジャーデビューしたダイダス効果もあってパンパンのライブハウス。桃香が男バンドマンに「ガールズのノリ大嫌いなんだよね」と絡まれるシーンが印象的。男バンドマンから見たら、今のダイダスも新川崎(仮)も"ガールズバンド"という括りで同じなのだろう。売れ線的なことをしたいわけではないけど、側から見たらそんなことは関係なくて、仁菜たちが狭間にいる存在なことがわかる。

ライブ本番、「爪痕って良い言葉だと思いませんか」と桃香に語る仁菜。仁菜が選んだのは自分たちの傷を晒すことだった。「不登校」「脱退」「嘘つき」とそれぞれ書かれたシャツを着て、荒々しくプレイする。

仁菜の考えた爪痕を残す方法が、自分たちのネガな部分をそのまま晒け出すっていうのが仁菜の異常なまでの頑固さと誠実さが表れてて良かった。

仁菜がこの方法を選んだのが、メジャーデビューで音楽性も見せ方も変わったダイダスとパラレルになってて、その演出の上手さにも唸るところ。

前まではライブシーンが内省的な描写も盛り込まれてMV的な作りだったけど、今回は実際のライブを意識したリアリティある絵作りで前まで違った楽しみがあった。

今のダイヤモンドダストとパラレルにする形で新川崎(仮)のライブが描かれたけど、変わるものと変わらないものとがキーになってくのかなぁと思う。執拗に仁菜の頑固さを描いてるのもそういう部分があって、物語が進めば成長はしてくだろうけど彼女たちの芯の部分は良くも悪くも変わらないって具合に変わっちゃいけない部分にフォーカスしていくのかも。

ーーー

現ダイダスのライブシーンでの絶望に叩き落とすところがすっごい演出として良くて。ポップな曲が流れる中で、ただ一人が怒りに震えているって絵面を思いついたの本当に拍手。

こういうアンビバレンツな演出だと、同じく音楽を題材にしたアメリカ映画『はじまりのうた』(ジョン・カーニー監督)のクライマックスを思い出す。ライブで一番盛り上がる瞬間が同時にメインキャラ二人の別離になっちゃうって演出なんだけど、どうやって受け止めたらいいんだ!ってこっちを揺さぶってくるフィルムもやっぱ良いなと。

あと5話は現ダイダスの新ボーカルがわかってから次回の引きにする方法もあったろうに、それすらもフリにして仁菜たちの決意まで1話にきっちり詰め込んでるのも、見応えもあるし見終わったあとの気持ちとしてもスッキリしてて、めっちゃ考えられてるなと。

次回はやっとこさキーボードとベースの本格的に絡んでくるか。期待したいところ。

歌声よおこれ

歌声よおこれ