マミヤの忘備録

ラップ、映像、その他諸々について記したいなぁと思ってます。

【感想】ガールズバンドクライ 第1話「東京ワッショイ」

約一年前、『ガールズバンドクライ』のメインスタッフが発表されて驚いたのを覚えてる。

ラブライブ!サンシャイン!!』の酒井和男が監督で、花田十輝が脚本、平山理志がプロデューサー。

自分の中で色めきだつものがあったけど、あくまでサンシャインとは別物だし、劇中バンドのトゲナシトゲアリの活動も積極的には追ってなかった。

でも不思議なもので「次のクールか…あと数週間か…もう数日か…」と日増しに期待値が上がっていくのを感じた。

迎えた第1話、やっぱ酒井監督のフィルム面白い。

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田舎から上京してきた少女・井芹仁菜、アバンの時点で不穏な空気をまとっていて「負けたくないから、間違ってないから」のモノローグにがっつり引き込まれた。走りすぎる電車のカットと仁菜の叫びをOPへの引きにするのはなんだか懐かしかった。

仁菜は故郷の熊本から出たい一心で上京を決意。川崎を右往左往した先で、憧れのバンド"ダイヤモンドダスト"の元ギタリスト・河原木桃香の路上ライブに向かう。

仁菜が心の支えだったことを真剣に伝えるうちに、桃香が淡々とした反応から次第にテンションが上がっていく流れが短いシーンながらも綺麗。

ヤンキーに絡まれたのを契機に仲を深める二人。そこで徐々に仁菜の意固地な部分が出て、言い合いとなり険悪な雰囲気に。桃香が議論を切り上げてギターを弾き始め、仁菜が手を伸ばすと「触んな」とキレ始めるのは笑った。

仁菜が高校中退して上京した経緯を話したところ、「楽勝じゃん」と桃香に軽口を叩かれ憤慨する。ここで二人のギャップとその埋めがたさが表現される。

桃香の年長者としての振舞いは「自分も前に通った道だ」と悩みを理解しているニュアンスを含むものではあると思う。それなりに経験を積んで、意外と何とかなることがわかっているやつの言葉。でも、それはやっぱりわかった気になってるだけなんだってのが表現された場面だ。

人は経験則から他者の苦悩や葛藤を相対的に見ることができる。それでも悩んでいる本人の主観においては、今ある苦しさが絶対的な位置を占めている。そしてそれを絶対的には他者にわかってもらえないというところにまた、苦しさがある。

その後、桃香は解散の経緯を話し、二人は互いの事情を開示することで仲直りする。完全には共有できないとしても、わかった気になるんじゃなく単に話を聞くこと、それがわかりあう近道なのかもしれない。

翌日、桃香は荷物を引き上げて帰郷した。すでにその姿はなく青いエレキギターを託された仁菜。ボディに記された"中指立ててけ!"という言葉を見て、たちまち桃香を探して川崎駅周辺を駆けずる。ここで仁菜が雨の中でさまようシーンがすごく合ってる(何気にCGでの雨のシーン違和感なくて良い)。

仁菜は走り回った果てに、川崎駅で路上ライブ中のヤンキーカップルのマイクを奪って「めちゃくちゃわがままでめちゃくちゃ自分勝手なことを言います!私負けたくなくてここに来ました。だから桃香さんにも負けないでほしい。だから一緒に中指立ててください!」と要求。それに呼応して桃香のギターの音色が響き、ヤンキーを巻き込んでライブが始まる。

このシーン、先の桃香の「楽勝じゃん」とパラレルになってるのが個人的には好きな演出。

桃香も仁菜も発言自体はどちらも自分本意だけど、桃香の「楽勝じゃん」は文字通り軽口で、仁菜の「一緒に中指立ててください」は重々しい要求になっている。

バンドの解散、バイト漬けの暮らし、先の見えない生活、その全ての清算のために帰郷することを選んだにもかかわらず、自らを呼ぶ声にすかさずギターを抱える桃香が頼もしくかっこよかった。

ダイヤモンドダストの『空の箱』ーー仁菜のテーマソングを、仁菜がメインボーカルとなって歌う。足を止める人はいないけど、唯一、過去の仁菜(と思われる)をオーディエンスの位置に置いたのが印象的。誰よりもまずは自分自身にわからせたいという表現にも見える。

降りしきる雨の中「どう足掻いても明日はない」という現状を表すような歌詞で第1話が終わるのが、物語の始まりとして良かった。

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正直、サンシャインが大好きだったからそこを抜きにして観ることはできなくて、かといってそれもスタッフ陣のキャリアだから悪いこととも思わなくて。

実際、ガルクラの精神性はサンシャインと地続きの部分がある。そこにさらに自己の存在証明に焦点を当てる物語になるのかなと。

自分の中ではサンシャインの変奏として物語を受け取っているけど、この先にどんな景色が見えるか楽しみだ。